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ホビー系のあれこれをお送りする本連載、今回は5月29日~6月6日に開催された「ワンホビ33」から注目のアイテム&トレンドをまとめてみましょう。
「ワンホビ33」は、グッドスマイルカンパニーとマックスファクトリーが秋葉原のリアル展示とオンライン展示で開催した新作発表イベント。最近は3カ月に1回程度のペースで開催されています。
今回も多数の新作が発表されていましたが、傾向として感じたのは二分化。ユーザー層を広くとるための低価格帯と、マニア層に向けたハイクオリティ&大ボリューム&高価格帯が目立つという印象でした。
低価格帯のPOP UP PARADE
まずは低価格帯。会場の1階フロアの大部分を占めていたのが「POP UP PARADE」シリーズ。この配置にはシリーズに対する強い思いを感じますし、物理的にもこんなに出ているんだというインパクトがありました。
これは一律税込3900円という買いやすい価格で、受注から約4カ月で発売するスピード感を持ったスケールフィギュアのシリーズ。幅広い作品とキャラクターを立体化し。すでにシリーズ100体を達成しています。同一作品から多くのキャラクターを出すことで、集めたくなるというのも特徴のひとつ。最近はグッドスマイルカンパニーだけではなくマックスファクトリーなども展開しています。
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海外でも人気が高い「ノーゲーム・ノーライフ」の白やシヴィ。「To LOVEる -とらぶる- ダークネス」は水着フィギュアがシリーズで登場。
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「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」は全員が登場。
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「遊☆戯☆王」のようにファン層が広い作品も。フィギュアでも定番作品となっている「Fate/Grand Order」も新キャラが発表されています。
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「ホロライブ」のキャラクターも。「ホロライブ」は「POP UP PARADE」だけではなく、ねんどろいどやスケールフィギュアも発表しています。
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「鬼滅の刃」は人気のイラストを再現。
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「呪術廻戦」の展開もはじまっています。
他にも「僕のヒーローアカデミア」はキャラがかなりそろってきてますし、「キャプテン翼」のようにちょっと珍しいタイトルも。このシリーズに限らないのですが、現在のフィギュア市場は国内だけではなく海外市場も含めて考えなければいけない状況で、そのあたりを意識したラインナップも。
このシリーズは2019年のスタート以来、税込3900円という価格をキープしつつ(消費税が8%から10%に上がってるので実質上値下げしてることにもなります)、クオリティも発売ペースも守り、ねんどろいどよりは流石に少ないもののかなり速いペースでシリーズ展開しているというのも驚異的なのです。
低価格帯のデフォルメフィギュア
デフォルメフィギュアの代名詞とも言える「ねんどろいど」ですが、安い物で5000円程度、高いものは1万円超と手軽に買うにはちょっと厳しめの価格になりつつあります。その「ねんどろいど」のバリエーションとして発表されたのが、「ねんどろいど Swacchao!」。オプションパーツ等は付属しない座りポーズの「ねんどろいど」で、既存の同キャラねんどろいどで使える座りポーズパーツも別売りされています。
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「初音ミク」から始まって、「僕のヒーローアカデミア」「東方Project」「ハイキュー!!」などを展開。
価格はいずれも3000円前後とおさえめ。実質上ワンポーズで飾りやすく、「ねんどろいど」への導入ともなりそうなシリーズです。
新しいデフォルメフィギュアシリーズとしては、「HELLO GOOD SMILE」も。展示内容は前回の「ワンホビ」から変化はありませんでしたが。
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初音ミク、鏡音リン、鏡音レンを展示。
全高サイズは「ねんどろいど」と同じくらいですが、頭身の関係でボリューム感的には小さめ。固定ポーズのようで、瞳も含めて塗装なども簡略化しています。もちろん手を抜いているというのではなく、クリエイティブディレクションとしてコヤマシゲト氏を起用、また新しくかわいいデフォルメデザインを提示しています。
造形、塗装ともにコストをおさえる方向であることがうかがえますが、いったい価格はいくらくらいになるのか、発売ペースはどうなるのかなど、気になるポイントが盛りだくさん。なんといってもシリーズ名に社名の“GOOD SMILE”を織り込んでいることからすれば、相当重視していることがうかがえますし、そこにHELLOと付くのであればファン層の拡大を担う狙いがあるとも考えられますし。今後の発表に注目したいところです。
高価格帯の大ボリュームフィギュア
大ボリュームのスケールフィギュアも会場で存在感を増していました。
会場入ってすぐの場所で、グッドスマイルカンパニー20周年記念作品の展示が行われていましたが、これがまたとんでもないことに。
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15周年記念フィギュアに続いて、20周年記念も「カードキャプターさくら」木之本桜。
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フィア本体はもちろん、大きなベースや幾重にも重なったスカートなど圧倒的な造形力!
CLAMP先生描き下ろしイラストを立体化した「カードキャプターさくら」。原型は15周年フィギュアと同じく河原隆幸氏が担当しています。聞けば基本的にデジタルではなくアナログの手原型だとか。なにもかもが繊細で美しくかわいいこのフィギュアは、現時点での最高到達点のひとつと言えるものになっています。
他にスケールフィギュアは全体的にボリュームアップしています。
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「藤ちょこ画集 彩幻想 彼岸の花嫁」。グッドスマイルカンパニーのフィギュアで、原型は佐々木界氏。
特に目をひいたのはこれ。スケールは1/8ですが、とにかく造形の情報量が多い! 花嫁衣装の表面は布地の凹凸がビッシリで、各所のパーツの重なり・立体構成も見物。
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「ブラック★ロックシューター HxxG Edition」マックスファクトリーのフィギュアで、原型はシャイニングウィザード@沢近氏。
「ブラック★ロックシューター」のフィギュアもダイナミックな空間構成が目をひきます。
こういった大ボリュームのフィギュアは高価になるので買う層もかなり限られます。また、開発期間もかかり、予約して手元に届くのに1年半とかかかるのは当たり前という状況に。今回展示されたフィギュアも予約開始時期と実際の発売時期がどうなることか。
ただその分最先端の造形&塗装を楽しめる物になるのは確実な逸品でもあるのです。
大ボリュームのフィギュアは海外、欧米や中国市場で非常に大きな勢力となっています。欧米では以前からアメコミや映画、アニメ(ルクセンブルグのTSUME ARTはもうけっこう老舗)などの大ボリュームフィギュア市場はありましたし、中国では新興のフィギュアメーカーが巨大なフィギュアを続々と発表しています(困ったことに無版権商品も混じってたりしますが)。
日本のスケールフィギュアもこういった海外向けを強く意識したうえでの展開が多いのですが、ざっくりした特徴だと欧米のメーカーは“迫力”、中国は“派手”、日本は“繊細”とお国柄が表れているようで面白いところ。
市場の変化への対応
00年代に完成品フィギュアブームが起こってファン層が拡大した時は、デフォルメや可動フィギュアで3000円、スケールフィギュアで7000~8000円ぐらいが普通で、誰もが買いやすい価格帯でした。ですが現在コストが上がって、本来なら数をそろえたいデフォルメや可動フィギュアで5000~8000円、スケールフィギュアは2万円近い価格帯になっています。
こうなるとなかなか新しいファン層は入りにくくなって、市場は先細りになっていきます。そんななかで、低価格にすることでファン層を広げることに挑み(欧米では前回のコラムで取り上げたFUNKOの「POP!」が大成功しています)、一方では先鋭化の方向に向かってある意味アートと言えそうなハイクオリティな造形作品をつくる。そういった方向性以外、他にもさまざまな試みがうかがえて面白いイベントでした。
ホビー&フィギュア トレンド
[筆者紹介]
島谷 光弘(シマタニ ミツヒロ) フィギュア専門誌「フィギュアマニアックス」を企画・編集し、2000年頃からフィギュアが質、量、人気ともに拡大する10年以上の時期をメディア側で見続ける。現在はフリーでウェブ「ホビーマニアックス」の運営や、ホビー系のウェブやメディアで執筆中。
「ワンホビ33」で見るフィギュアトレンド 価格&サイズで二分化する市場 - アニメハック
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