試験的に行われてきたコメの先物取引が廃止されることになった。政府は、コメの価格の決まり方を見えやすくする別の施策を検討すべきだ。
農林水産省は、大阪堂島商品取引所(現・堂島取引所)が申請していたコメ先物の「本上場」について、認可しなかった。
本上場は、コメ先物の売買を恒久的に可能にするものだ。堂島商取は2011年から、2年間の「試験上場」の延長を繰り返す形で取引を続けていたが、今回で継続を断念するという。
コメの先物は、江戸時代に大阪で始まった「堂島米会所」が源流で、世界初の先物取引とされるだけに、廃止は残念だ。
先物取引は、将来売買するコメの数量や価格などをあらかじめ決めておく仕組みである。
作況は天候に左右されるが、豊作で供給が増えても、先物を使うと農家は値下がりの損を避けられる。収穫前に収入がわかり、営農計画も立てやすい。先物が指標となり、価格形成が透明化すれば、消費者の恩恵も大きい。
今回、農水省は、本上場を認可しない理由として、生産業者や流通業者の参加が十分に増えていないことなどを挙げている。
コメ流通の4割を握るJAグループが、参加に慎重な姿勢を崩さないことが影響している。農家には、コメが投機対象となることへの懸念が根強いという。先物による受け渡し量は、市場全体の1%以下にとどまっていた。
無論、主食であるコメの価格が投機で乱高下することは避けるべきだ。ただ、現在の価格形成は、JAグループが主導権を握っている相対取引が中心で、市場の実勢を反映していないとされる。
需要が年々減る中で、コメの取引価格は19年産まで上昇基調にあった。それが「コメ離れ」をさらに加速させた可能性がある。
JAには、先物が拡大すれば、価格決定の主導権を奪われるとの警戒感があるのだろう。自民党も本上場について、農水省に「慎重な判断」を求めたという。
コメ政策は、生産や流通の自由度を高める改革が進められ、18年産からは、生産量を強制的に減らして価格を維持する減反をやめている。先物市場の廃止は、改革の流れに反するのではないか。
農水省は今後、先物の代わりに、実際の需給を的確に反映する「現物市場」の創設を目指すという。農家の創意工夫を促し、魅力あるコメづくりにつながるような市場作りに努めなければならない。
コメ先物廃止 価格形成の透明化が遠のいた - 読売新聞
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