小麦を始めとする穀物の価格が世界的に高騰している。家計から企業まで影響は広範囲に及ぶ。安定した調達のために、官民で万全の方策を検討してもらいたい。
政府は、製粉業者などに売り渡す輸入小麦の価格を、10月から19%引き上げることを決めた。産地の天候不順などが原因だ。上げ幅は、新興国の需要増に産地の干ばつが重なって30%上昇した2008年以来の大きさとなった。
小麦は国内需要の約9割を輸入に頼っている。主要な食料のため国が輸入を一元的に管理し、年2回、国際相場に合わせて売り渡し価格を決定する仕組みだ。
食の多様化でコメの消費量が減る一方、パンや麺類、菓子など多くの食品の材料となる小麦は需要が安定し、コメと並んで欠かせない穀物の一つとなっている。価格の急激な変動は望ましくない。
政府によると、今回の価格改定がそのまま転嫁されると、食パン1斤(400グラム)で2・3円、家庭用の薄力粉(1キロ・グラム)は14・1円程度値上がりする。小売価格に反映されるのは、来年1月前後になる見通しだ。
小麦は、前回4月にも輸入価格が5・5%引き上げられた。それに伴い、最大手の日清製粉グループの日清フーズが、家庭用の小麦粉を7月に、天ぷら粉などを9月に値上げしたばかりだった。
大豆やトウモロコシなど他の穀物価格も高水準にあり、大豆が主な原料の家庭用食用油やマーガリンの価格にも波及している。家計への打撃が懸念される。
コロナ禍による営業時間の短縮で収入が激減した飲食店に、追い打ちをかけることも心配だ。
小麦の値上がりは、主要な輸出国である米国とカナダが高温・乾燥に見舞われ、作況が悪化したことが要因の一つだという。
景気が回復した中国で豚の飼料用の輸入が増えたことや、世界的な巣ごもり需要の高まりによる船便の運賃上昇も響いている。
地球温暖化で、今後も干ばつなどの被害は続くと想定される。政府は、調達先の拡大などを検討し、安定的に小麦を輸入できる体制の確保に努めねばならない。
国内での小麦の生産強化にも取り組んでほしい。消費者に食の安全性を重視する傾向が強まる中、国産の需要は伸びている。
国産を使う食パンを発売した大手製パン会社がある。うどんや中華麺、フランスパン向けの新品種の栽培も行われている。品質の向上と販路開拓を進めたい。
穀物価格高騰 家計や企業への影響が心配だ - 読売新聞
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