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Friday, October 29, 2021

トヨタが新型BEV『bZ4X』の詳細を発表〜価格や販売目標台数はまだ不明 - EVsmartブログ

バッテリー容量は「71.4kWh」

2021年10月27日、トヨタ自動車が新型電気自動車『bZ4X(ビーズィーフォーエックス)』に関するメディア説明会をオンラインで開催。29日にニュースリリースを発表しました。EVsmartブログ編集部は残念ながら説明会に参加できなかったのですが、日本のユーザーの多くが期待する「トヨタの電気自動車」には興味しんしん。複数の自動車評論家と議論しつつ発表された情報を整理、編集部がポイントをまとめた記事として紹介します。

記事中写真の車両はすべてプロトタイプです。

最初のポイントは、なにはともあれ、明らかになったスペックです。

『bZ4X』主要諸元(日本仕様 ※車内測定値)

EVsmartブログ的にいちばん気になったのは、最大150kWと明示されたDC充電=急速充電性能です。これは、日産アリアの130kWを超えて、日本国内のチャデモ規格対応車としてはポルシェタイカンやアウディe-tron GTに匹敵する性能です。

ただし、日本国内の公共充電インフラはまだ最大90kW器の拡充を急いでいる段階で、150kW器の普及は当面見込まれていません。ポルシェやアウディ、そして日産では独自に150kW器によるユーザー向け充電インフラ(少なくとも日産の充電器はeMPネットワークに入るはず)を設置していくことを表明していますが、トヨタはどうするのでしょうか。参加した自動車評論家に確認したところ、残念ながら詳しい説明はなく、質疑応答の質問もなかったようです。

BEV専用プラットフォームを採用。

EVsmartブログの記事ではしばしば提言していることですが、現状のEV普及状況を勘案すると公共の急速充電インフラは最大90kWで十分。20〜30kW程度の充電器も多く広がってしまっている中、ことに高速道路SAPAや主要一般道のハブとなるような地点付近に、最大90kWを目安とした高出力器の複数台(口)設置を急ぐことが課題になっています。

一方で、全国40カ所になろうとしているテスラのスーパーチャージャーをはじめ、日産、ポルシェ、アウディといったメーカーは、自社が誇るEVの性能をユーザーが享受できるよう、最大150kWの超高出力急速充電ネットワーク構築を独自に進めようとしています。つまり、超高出力の急速充電ネットワークは、それに対応できるEVの「性能の一部」といえます。

トヨタではオプションで急速充電可能な『プリウスPHV』や、レクサスブランドから電気自動車『UX300e』などを発売していますが、トヨタディーラーに急速充電器はほとんど設置されておらず、レクサスディーラーに設置が進められている急速充電器も使えるのは営業時間内のみというところが多い現状です。はたして、『bZ4X』の発売をきっかけにして、一気にトヨタディーラーへの150kW器設置が進むのか? 正式な発売発表の際には、ぜひ急速充電ネットワークについて言及してほしい、いや、喜ばしく頼もしい発表を期待したいと思います。

ちなみに、日本仕様の150kWは当然チャデモ規格です。『bZ4X』をはじめとする『bZ』シリーズの電気自動車は、「中国・米国・欧州・日本などの、BEVの需要や再生可能エネルギーによる電力供給が多い地域で発売する」ということで、欧米のコンボ規格、中国のGB-T規格でも最大150kWの対応となります。

価格や販売目標台数などは発表されず

ステアバイワイヤシステムと異形ステアリングホイールを組み合わせた「ワンモーショングリップ」装着車も用意されます。

トヨタの『bZ』シリーズは、「bZ=beyond Zero(ゼロを超えた価値)」を目指して展開される専用プラットフォームによる電気自動車です。『bZ4X』はシリーズの第一弾として、「2022年年央より世界各地(前述の中国・米国・欧州・日本など)」で発売することが発表されました。ざっくり言って半年後、もうすぐです。

トヨタ待ちユーザーとして気になるのはやっぱり値段ですが、今回は未発表。質疑応答で「スバルと共同開発していることもあり、まだ明言できない」旨の説明がありました。同様に、生産する工場や、各国別、ことに日本での販売目標台数なども「まだ発表できない」ということでした。

価格を推察しておくと、71.4kWhというバッテリー容量はテスラ『モデル3』を例にすると、推定54kWhのスタンダードレンジプラス(493万円〜)と、79.5kWhのロングレンジ(509万円〜)の中間程度。日産アリアの65kWhモデルは、実質500万円程度で発売されることがアナウンスされています。

SUVスタイルのテスラ『モデルY』が導入されたらモデル3より80万円くらい高い590万〜600万程度(ロングレンジ)になるとして、『bZ4X』(スバルから発売される『ソルテラ』も)は、実質500万円台前半程度には設定しないと、競合車と勝負できないのではないかと思われます。

逆に、このスペックで日産アリアのエントリーグレードと同等の「実質500万円」以下〜で登場してくれるのであれば「さすがトヨタ!」と賞賛できます。

説明会では「『bZ4X』の『4』はセグメント、『X』は形状を示す」という説明がありました。『bZ』シリーズには「2025年までに7車種を導入する予定」ということなので、数年のうちにBセグメントやAセグメントの『bZ2』とか『bZ1』と名付けられたトヨタのEVが登場してくるのだと思われます。『bZ4X』の価格が500万円を超えるのはほぼ確定的でしょう。でも、コンパクトなサイズの『bZ1』あたりでは、ぜひ実質200万円で実用的に200kmオーバー(できれば300km)を実現して欲しい、と願います。

コンセプトの真価はまだ未知数

説明会では、『bZ』シリーズのコンセプトとともに、それに対応した『bZ4X』の装備なども紹介されました。

とはいえ、室内空間の静粛性や居心地の良さ、ヒートポンプエアコンやシートヒーターなどによる暖房の効率化(冬場の航続距離確保)、OTAアップデートの採用、エトセトラ、といった内容で、あまり目新しいポイントはありませんでした。

一点、「You & the Environment:ヒトと地球/CO2排出量など、マイナスを減らすだけではなくプラスを生み出す」というコンセプト実現を目指した装備として、ルーフにソーラーパネル装着車を設定するという説明がありました。ソーラーパネルの発電量は「1年間で走行距離1,800㎞(社内試算値)に相当」とのこと。PVの年間発電量は「1kW出力のパネルで年間1000kWh」が目安といわれています。発表された一充電航続距離は「500km前後」なので、「500÷71.4=約7km/kWh」として、1800km走行分の電力は約257kWh。つまり、出力250W程度のソーラーパネル(自動車の屋根としては「ほぼ全面」じゃないでしょうか)を装着する計画ではないかと推察できます。

外部給電に対応することも発表には明記されているので、非常時などの電源として考えるとEVの新たな価値創出に繋がるアイデアだと思います。ガレージに屋根がなく、週末しかクルマに乗らないというユーザーなら「ほとんどソーラー充電!」といった乗り方ができる可能性もあります。今回の発表に言及はなかったですが、別売機器を使ったV2HやV2Lだけでなく、ぜひ、AC100Vのコンセントを標準装備して欲しいところです。

でも、トヨタはまだEVに本気じゃない?

トヨタが満を持して送り出す電気自動車、『bZ』シリーズには期待したい一方で、今回の発表リリースや説明会での発言には「あれ、トヨタはやっぱりまだ電気自動車に本気ではないのかな」と感じる点がありました。

「You&Your Car:ヒトとクルマ/BEVならではの運転の楽しさ、可能性を期待させるワクワク感の提供」というコンセプトを説明する文は、いきなり「「電動車は退屈」という常識を覆す」という電動車=EVへのネガティブな決めつけから始まります。少なくともEVsmartブログ編集部の面々は、「電動車は退屈」とは思っていないし、いったい誰の「常識」なのか疑問です。

説明会、ことに質疑応答のやりとりの中でも「EVはまだまだ」「売れるかどうかわからない」「電池の性能、ことに長寿命を実現しないと」といった、現状の電気自動車にトヨタは満足できていないと受け取れるコメントが散見されました。これからEVを発売しようという発表会で「EVはまだまだ」とか言われてしまうと、『bZ4X』や、すでに発売されているレクサス『UX300e』を買うのは時期尚早? と感じてしまいます。

EVシフトはトヨタにとって「不都合な真実」なのかも知れないですが、世界の流れは止まりません。今後、EVや搭載する電池の性能は急ピッチで進化していくことでしょう。日本の屋台骨を支える世界のトヨタには、現状でベストを尽くしたEVを、自信満々で世の中に送り出して欲しいと願います。また、『bZ4X』の日本国内での年間販売目標台数が「1000台」とかではないことを祈っています。

(文/EVsmartブログ編集部)

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