原油価格の高騰が景気の足かせ要因として急浮上している。原油の輸入コスト上昇が物価高を引き起こし、暮らしに打撃を与えかねないためだ。政府は物価動向を注視しつつ、必要な場合は躊躇(ちゅうちょ)なく対策に乗り出すべきだ。
原油価格は先週のニューヨーク市場で一時、一バレル当たり七九ドルと七年ぶりの高水準を付けた。その後も上昇を続け十一日には一時、八二ドル台に達するなど上昇傾向が鮮明な状況になっている。
上昇の背景には急激な需要の増大がある。欧米では日本より一足早くコロナ後を意識した通常生活に戻りつつあり、消費が急回復している。これが需要増の引き金をひいたことは確実だ。
石油輸出国機構(OPEC)とロシア、メキシコによる産油国会議で大幅増産が見送られたことも高騰に拍車をかけた。脱炭素化が加速する中、市場価値があるうちに価格を引き上げ利潤を確保したい産油国の思惑が透けて見える。
日本国内ではすでに物価上昇が顕在化している。日銀が公表した九月分の企業物価指数は二〇〇八年八月以来の高水準を付けた。企業同士の取引価格の上昇が、消費者が買うモノの値段に連鎖するのは時間の問題だろう。
政府は物価動向を見極める構えだが、対策を素早く打てる体制を整えることが急務だ。具体的には石油備蓄を迅速に放出できるよう対策を講じてほしい。
上昇を続けるガソリン価格については直接対応を検討すべきだ。ガソリン価格は三カ月連続で全国平均小売価格が百六十円を超えた場合、価格を下げる仕組みがある。東日本大震災後、復興財源確保の名目で凍結されているが、十月公表分は百六十円に達しており解除も視野に入れるべきだ。
冬の訪れと共にエネルギー需要は高まる。電気料金や暖房費など価格高騰が暮らしに与える影響は計り知れない。ただ原油高騰を理由にした原発利用の推進は容認できない。世界経済の流れは再生エネルギーに向いている。官民を挙げた再生エネへのシフトが最適解であることを重ねて主張したい。
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<社説>原油価格高騰 物価への波及に警戒を - 東京新聞
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