3密回避が続くなか、アウトドア仕様に改造する軽トラック(軽トラ)が増えている。荷台を有効活用できる骨組みなどのパーツや、キャンピングカーとして使用できる居住スペースに注文が殺到。手頃な車体価格と改造費が魅力で、専門のムック本も発行された。仕事用のみならず、海や山のレジャーにも-。販売低迷が続く軽トラに新機軸が生まれつつある。(川村岳也)
兵庫県丹波篠山市にある軽自動車部品販売会社「エフクラス」の約3千平方メートルの駐車場に、50台の軽トラが並ぶ。いずれも改造(カスタム)注文を待つ、アウトドア用として人気がある土色の新車だ。40台が売れた月もあるといい、今も18人の従業員が出荷などにかかりきりの状態だ。同社の田中宏之介社長(48)は「軽トラをカスタムするパーツが、事業の主力になっています」と、顔をほころばす。
2017年から軽トラのパーツを販売。建設業者向けに、荷台に取り付けて脚立などを運ぶ骨組み(約11万円)を独自開発した。
転機は、新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた20年春。3密を避けるため、空前のアウトドアブームが訪れた。荷台に取り付ける骨組みを「レジャー用に使いたい」と、注文が舞い込むようになった。
田中社長は「これはいける」と考え、キャンプで日よけに用いるサイドオーニングや車に固定できるルームテントなどの新商品をそろえた。現在は約30種類に増え、値段も約4千~14万円。中でも荷台用の骨組みは人気商品となり、月に約300個売れることも。今年の売り上げは前年比約50%増で推移している。
田中社長は「車体価格を含めて、フルスペックで改造しても200万円くらい。安(安全)・近(近い)・単(単身)のレジャー志向にもマッチしている」と話す。同社は専用パンフレットを定期的に発行し、さらなる顧客獲得を目指す。
軽トラの荷台に取り付け可能な居住スペースを販売する「JUSETZ(ジューセツ)マーケティング」(神戸市中央区)。最大4人が眠れる広さを備えた居住スペース(約58万円)は、月40件の申し込みがある。コロナ禍前の20年と比べると注文数は約3・5倍に急増した。
17年には軽トラのキャンピングカー販売に乗り出した。住宅機器卸売業の副業だったが、現在はキャンピングカー製造・販売がメイン。21年に専用工場を2カ所増設した。同社の武智剛社長(41)は「(緊急事態宣言が解除された)今年10月以降は、発注が減ると予想していた」と話すが、注文は続き、新たに工場を建設することを決めた。
今年11月に軽トラを特集したムック本「軽トラスタイル」を発行した交通タイムス社(東京都)の杉本大輔さんは「軽トラの魅力はなんといっても価格。一般のキャンピングカーより居住性は劣るが、ソロキャンプなら、あるいは少人数ならこれで、と考えるのでは」と分析。「1分の1スケールのおもちゃのように考えて、安く買って好きなようにいじることを楽しむ人もいる」と指摘している。
■新車販売台数30年で半減
軽トラック(軽トラ)を含めた軽自動車の規格は、1949(昭和24)年に制定された。海外には同様の規格がなく、日本独特の存在だ。小型の普通自動車と遜色ない新型車が続々と投入され、人気が続く軽乗用車に対し、軽トラの新車販売台数は下降線をたどる。
全国軽自動車協会連合会(全軽自協)によると、1990年に約41万台だった軽トラの新車販売台数は、2020年には約18万台と、半分以下に落ち込んだ。軽乗用車が同じ30年間で50万台以上を増やしているのとは対照的だ。
全軽自協によると、農業人口の減少に加え、運送業がワンボックスタイプに移行したことなどが挙げられるという。「今後も販売台数の増加はあまり見込めない」と担当者。メーカーの撤退も相次ぎ、自社工場で製造するのはスズキとダイハツの2社のみだ。
担当者は「今でも農業のニーズは大きい。軽トラは構造がシンプルな分、仕事からレジャーまで幅広い使い方ができる。コロナ禍で見直しが進む可能性もある」としている。(川村岳也)
“改造”軽トラ人気 手頃な価格で自分好みに 3密回避、レジャーからテレワークまで - 神戸新聞
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