ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、原油をはじめとする資源価格の急騰、それに伴う物価上昇も相次ぎ、インフレやモノ不足に陥る「第3次オイルショック」の可能性が現実味を帯びている。石油輸出国機構(OPEC)による原油の増産ペース引き上げ観測から、9日のニューヨーク原油先物相場は急落するも、高値水準が継続する可能性は依然高い。電気料金や食料品価格の上昇など家計の負担増も懸念され、綱渡りの状況はしばらく続きそうだ。
「この2022年のエネルギー危機は、激しさや粗暴さで、1973年のオイルショックに匹敵するといっても過言ではない」。仏メディアによると、フランスのルメール経済・財務相は今月9日にこう述べた。
73年の第1次オイルショックでは、国際的な原油価格が一挙に4倍に急騰したことで世界経済は大混乱。日本も「狂乱物価」の状態に見舞われ、74(昭和49)年度の経済成長率は戦後初めてのマイナス成長となった。
日本政府はウクライナ問題を受け、「安定供給、国益を守るためにも確保が必要」(経済産業省関係者)とし、ロシア産原油の供給を維持。国内のガソリンなど燃油価格急騰を抑制するため、石油元売り会社に支払う補助金額の上限を5円から25円に拡充するなど、経済への影響緩和策を打ち出す。
ただ、戦況が長期化した場合、資源価格が高値で推移し続ける懸念がある。
第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストの最新の試算では、今後の原油価格が仮に1バレルあたり平均120ドルで推移した場合、今年から来年にかけての家計負担が約4万4000円増えるという。永浜氏は「日本は原油のほとんどを海外に依存し、かつ、生活必需品のため原油を消費しないことには生活ができない」と、家計に悪影響を及ぼす可能性を指摘する。
加えて、脱炭素の流れでガソリンの代替エネルギーとして普及が進むバイオ燃料の需要増加による価格高騰も懸念される。その場合、原料の穀物価格も上がり、食料品の値上がりにつながることが想定される。こうした理由から「第3次オイルショックになるのでは」(永浜氏)との見方を示す。
ロシア、ウクライナ問題の先行きが見えない中、かつてのオイルショック時のような経済的混乱を生まないためにも、政府の慎重、かつ迅速な対応が求められる。(那須慎一)
急騰する資源価格、家計4万4千円増の試算も - 産経ニュース
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