食料品の値上がりの要因となっている小麦などの穀物価格の高値が長期化する懸念が強まっている。ウクライナ侵攻などの影響でロシアや中国が主要輸出国の肥料原料の供給不安が広がり、国際価格が昨年1月比で3・2~4・8倍に高騰する事態が起きているためだ。全国農業協同組合連合会(JA全農)はロシア産の輸入分を全面的に他国産に切り替えるなど調達先を見直しているが、農産物の収穫量を左右する肥料価格の上昇は食料の安定供給も脅かしかねない。
国内肥料の原料調達で5割超のシェアを持つJA全農は毎年6月と11月の年2回、農協や販売店向けの肥料価格を改定している。昨年6月からは値上げせざるを得ず、11月には前年比2割超の引き上げとなった。JA全農の担当者は「今年6月の値上げも避けられない情勢だ」と話す。
農産物を効率的に生産するために使う肥料はカリウム、窒素とリンが「肥料の3要素」と呼ばれ、塩化カリウム、尿素、リン酸アンモニウム(りん安)の形で利用する。
日本は肥料原料をほぼすべて輸入しており、令和2年7月~3年6月の調達国別シェアでは、りん安の90%、尿素の37%を中国、塩化カリウムはロシアが16%、ベラルーシが10%を占める。
原料価格は以前から、世界的な食料需要の増加や燃料高騰などにより上昇傾向にあったが、昨年10月、電力不足に陥った中国が自国内の肥料価格安定のため輸出検査強化を打ち出し、流通が停滞したことで需給が逼迫(ひっぱく)。さらにウクライナ侵攻と対露経済制裁による供給懸念が重なり、市場価格の上昇圧力が一段と高まる形となっている。
JA全農では安定供給を確保するため、年間3~4万トンに上るロシア産塩化カリウムの輸入をカナダや中東からの調達に切り替えた。また、昨年からりん安は中国分をモロッコ産などで代替するなどの対応をとったが、その結果、輸送・保管コストが増加したという。全国農業協同組合中央会(JA全中)の中家徹会長は「農産物は価格転嫁が難しく農家の所得減になり、生産をやめる農家が出かねない」と指摘する。
このため、政府は物価高騰の総合緊急対策に肥料原料の安定調達に向けた追加経費支援などを盛り込む方針だ。ただ、ウクライナ危機を受けた国際的な肥料原料確保の動きは争奪戦の様相を呈し始めており、肥料高は長引く可能性がある。(日野稚子)
肥料価格が高騰 食品価格に波及も - 産経ニュース
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