ロシアのウクライナ侵攻に伴う原材料などの価格高騰や仕入れ困難が重なり、中小企業の経営が圧迫されている実態が、城南信用金庫(東京都品川区)と東京新聞のアンケートで浮き彫りになった。製造や飲食、卸小売業など幅広い業種に影響は及び全体の8割の企業が原材料高を取引価格に転嫁できていないと回答した。製造業の3割は深刻な部品不足に苦慮していることも分かった。(石川修巳)
調査は今月8~12日、城南信金が東京、神奈川両都県にある本支店を通じて実施。取引先の中小企業798社から回答を得て、本紙が分析した。
資源高や原材料高で「深刻な悪影響」「やや悪影響」と答えたのは全体の79%。値上げで顧客が離れる懸念などから、価格転嫁が「まったくできていない」「ほとんどできていない」「一部できていない」企業は合わせて81・5%に上った。
東京都町田市のレストランは「新型コロナ禍で客足が復調していないのに油などが高騰。価格にほとんど転嫁できておらず、かなり厳しい」と訴えた。「得意先の4割が価格転嫁を承諾してくれない」(大田区のプラスチック卸小売業)、「見積書の提出後に仕入れ価格が上がっても、あらためて値上げ交渉するのは難しい」(横浜市の空調工事会社)などの声もある。
部品の欠品など仕入れ困難による影響も大きい。特に製造業の28・2%が「深刻」と答えた。「やや悪影響がある」を合計すると、製造業、建設業はともに8割を超えた。川崎市の自動車部品会社は「部材がなく製造できない。受注残は1年分あるのに」と語り、受注量の制限や納期変更を余儀なくされている。
こうしたマイナス要因が重なって「工期が長引き設備価格も上がり、資金繰りが厳しくなっている」(品川区の内外装工事会社)との声も。円安による影響も出ており、特に卸小売業の58・3%が「深刻」「やや悪影響」と答えた。
原材料高、仕入れ困難への対策を複数回答で尋ねると、価格転嫁が最も多く、「仕入れ先の変更・多様化」「納期の変更」「代替品の調達」が続いた。
◆政府などへの要望相次ぐ
城南信用金庫と本紙が実施したアンケートでは、企業努力では解決の難しい苦境に追い込まれた中小企業の姿が浮かぶ。各社からは、価格転嫁のための新しい仕組みや補助金の拡充など国などへの要望が相次いだ。
「仕入れのたびに原材料価格がどんどん上がっている」という東京都目黒区の金属表面処理会社。取引価格への転嫁を検討しているが、何度も値上げするのは難しい。
経営者は「原材料高の価格転嫁は認めるが、賃上げ分はだめ、と取引先に告げられたこともある」と打ち明けた。しわ寄せは従業員の生活にも及んでいる。「国は中小企業が賃上げするためのサポートをしてほしい」と話した。
相模原市の運送業者も原油高によるコスト増を価格転嫁できず苦しむ。「転嫁できない企業がほとんど」と指摘。支援策を求めた。
ほかにも期間限定の消費税の減税や、利用しやすい補助金を設けることなどを求める声があった。大田区の電子機器製造会社は「部品の納入遅延で完成品にできない。建設業のように前金、部分払いの仕組みを検討して」と訴えた。
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