RedmiシリーズやMiシリーズ、Xiaomiシリーズなど、コストパフォーマンスの高いモデルを国内市場に相次いで展開するシャオミから、独特のデザインが目を引くハイエンドスマートフォン「POCO F4 GT」が発売された。筆者も実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。
eスポーツが盛り上がる中で国内市場に投入
エンターテインメントには映画や音楽、ドラマ、演劇、スポーツなど、さまざまなジャンルがあるが、ゲームも欠かせないエンターテインメントのひとつだ。なかでもここ数年、一般メディアでも「eスポーツ」が取り上げられることが増え、「スポーツとしてのゲーム」が徐々に認知されつつある。
当然、モバイル業界においてもeスポーツの取り組みがはじまっており、シャープやソニー、モトローラなどがプロeスポーツのチームとタイアップしたり、大会などのイベントに協賛したりする一方、NTTドコモはeスポーツリーグのブランド「X-MOMENT」を設立し、「PUBG MOBILE」のリーグを開催するなど、eスポーツに積極的な姿勢を見せている。
ゲームは世代や環境、嗜好によって、捉え方に差があるため、eスポーツがどこまで多くの人に認識されているのか、eスポーツを楽しむデバイスがスマートフォンなのか、PS5やXboxなどのゲーム機なのか、どんなゲームをどの程度、プレイするのかなど、いろいろな見方があるが、もっとも身近なデジタルデバイスであるスマートフォンでゲームをプレイし、オンラインを通じて、仲間と楽しむユーザーが増えていることは確かだ。
eスポーツを楽しむためのスマートフォンとしては、XperiaやGalaxy、AQUOSなどの各社のフラッグシップに加え、より本格的なゲーミングスマートフォンとして、ASUS製「ROG Phone」シリーズなどが知られている。これらのモデルはフラッグシップクラスのチップセットに、高負荷に耐えられる冷却性能、ディスプレイのなめらかな表示と優れたタッチレスポンスなどを組み合わせることなどで、ゲームに最適な環境を作り出している。
今回、シャオミから発売された「POCO F4 GT」は、こうしたゲーミングスマートフォンやフラッグシップモデルに匹敵する内容をリーズナブルな価格で実現したモデルだ。シャオミでは国内参入時に展開された「Mi」シリーズや現在の「Xiaomi」シリーズ、ミッドレンジで人気の高い「Redmi」シリーズなどがラインアップされているが、「POCO」は元々、シャオミの別ブランドとして、中国や海外市場で展開されている。
「POCO F4 GT」のオンライン説明会でも触れられていたが、Xiaomiブランドの製品はすでに十数年の歴史があり、より幅広いユーザー層に支持されているため、製品としては万人受けを目指す方向にある。
これに対し、POCOブランドはシャオミで培われた経験や知見を活かし、柔軟性やイノベーションを持ったビジネスモデルとして構築され、「テクノロジー愛好家」をターゲットにした製品を展開するとしている。具体的には、念のため、搭載しているような機能は省き、必要な性能にフォーカスを当て、性能とパフォーマンスを追求しながら、アグレッシブなデザインと機能を搭載し、ハイパフォーマンスな製品を目指すという。
昨年あたりから、最近のスマートフォンが画一的で面白くないといった指摘が増えているが、シャオミとしては「Xiaomi」シリーズや「Redmi」シリーズなどで幅広いユーザーのニーズに応えつつ、「POCO」シリーズではスペックなどを重視する尖った製品として展開したい考えのようだ。
「POCO」シリーズが国内市場に投入された背景には、「POCO」シリーズの発表会をオンラインで開催したところ、日本からの視聴も多く、SNSなどの反響を中心に、国内市場投入を期待する声が数多く聞かれたことも影響しているという。今の時代らしい反響とアプローチと言えそうだ。
今回の「POCO F4 GT」にはいくつかの注目ポイントがあるが、なかでも驚かされるのが価格設定だろう。2022年のフラッグシップクラスのチップセットである米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen 1を搭載しながら、「RAM 8GB / ROM 128GB」モデルが7万4800円、「RAM 12GB / ROM 256GB」が8万4800円に設定されている。
同じチップセットを搭載したほかのフラッグシップモデルが20万円近い価格を設定していることと比較すると、半値以下の価格で購入できるわけだ。もちろん、チップセット以外の仕様が大きく異なるため、単純に「半値」と表現するのはあまり適切ではないが、スマートフォンとしての基本的なパフォーマンスを重視したいユーザーにとっては、魅力的な価格設定と言えるだろう。
こうした価格設定ができた理由としては、グローバル市場に製品を展開するシャオミがより多くの部品を調達しているため、コスト的なアドバンテージがあることが挙げられるが、もうひとつの理由として、販路がオンラインに限られていることも関係している。今のところ、「POCO F4 GT」はシャオミ公式ストア「Mi.com」や「Xiaomi公式楽天市場店」、「Amazon.co.jp」などに限られており、購入前に実機を手にして、試すことができない。
これまでオープン市場向けに展開されてきたシャオミ製端末は、家電量販店で試すことができ、一部のモデルは各携帯電話会社でも扱われたり、共通モデルが採用されたりしたため、キャリアショップにも展示されていたが、試用できる環境が限られている本製品がどこまでユーザーに認知され、受け入れられていくのかも非常に気になるところだ。
サイバーイエローを中心に目を引く背面デザイン
まず、外観から見てみよう。ボディは幅76.7mmの標準的なサイズ感で、スクエアな形状を採用しているが、背面のサイバーなデザインとボディカラーが目を引く。背面は指紋の跡などが残りにくいテクスチャー処理が施され、両側面から背面中央に向かって、グラフィックがあしらわれている。
ボディカラーのステルスブラックとナイトシルバーはある程度、落ち着きがあるが、メインカラーのサイバーイエローはかなりインパクトのある仕上がりで目を引く。人によって、好みもあるだろうが、「どうせなら、これくらい派手なものを持ちたい」と思わせるほどのデザインだ。
背面でもうひとつ目を引くのがカメラ周りに備えられた「RGB Light」だ。メッセージや通話などの通知に加え、充電時やゲームプレイ中の「Game Turbo mode」などで点灯する。かつてのケータイ時代はメールや電話の着信時に点灯するLEDが備えられ、その見せ方や光り方も随分と工夫されていたが、そんなイメージを彷彿とさせるユニークな取り組みだろう。
耐環境性能はグローバル向けモデルをベースにしていることもあり、IP規格準拠に対する表記はない。このあたりはおサイフケータイ(FeliCa)などと並んで、価格とのトレードオフの部分もあるので、しかたないところだろう。
日本仕様を求めるのであれば、本体のスペックは下がってしまうが、「Redmi Note 11 Pro 5G」や「Redmi Note 10T」という選択肢も用意されている。
生体認証は本体右側面に備えられた電源ボタンに内蔵された指紋センサーによる指紋認証に対応し、インカメラによる顔認証も利用できる。徐々にマスクを着けるシーンが減ってくるかもしれないが、両方が利用できれば、外出時は指紋認証、自宅などでは顔認証といった使い分けができる。
ディスプレイはフルHD+対応6.67インチ有機EL(AMOLED)ディスプレイを搭載する。縦横比は20:9で、明るさは800nit、DCI-P3広色域、HDR10+などに対応する。
リフレッシュレートは最大120Hzで、タッチサンプリングレートは最大480Hzに対応する。表示は最大10億色表示に対応し、強い太陽光の下でも見やすい「サンライトモード」、ブルーライトによる目の疲れを抑える「サンライトモード」などにも対応する。
ディスプレイ前面のガラスにはキズが付きにくいCorning社製Gorilla Glass Victusを採用しており、出荷時には実使用が可能な保護シールも貼付されている。
最大120Wの急速充電に対応
チップセットは前述の通り、2022年のフラッグシップクラスに位置付けられる「Snapdragon 8 Gen 1」を搭載する。一般的な操作もキビキビしており、ストレスなく操作できる。
メモリーとストレージは「RAM 8GB / ROM 128GB」と「RAM 12GB / ROM 256GB」の2つのモデルが用意されており、後者の「RAM 12GB / ROM 256GB」はAmazonで購入できる。
外部メモリーカードには対応していないため、写真や動画など、より多くのデータを保存したいのであれば、大容量のモデルを選ぶ必要がある。最近ではスマートフォンで楽しむゲームも大容量化が進んでいるため、自分がプレイしたいゲームによって、選ぶのも手だ。
ちなみに、ほかのシャオミ製端末でも同様の機能が搭載されているが、「POCO F4 GT」にはストレージを占有することで、約3GBのメモリーを追加する「メモリ増設」の機能も搭載されている。
ゲームでの快適なプレイ環境を考えると、こうしたハイスペックなチップセットは非常に有用だが、スマートフォンは手に持つデバイスであるため、放熱設計や内部の冷却が重要になってくる。仮に、チップセットのピーク性能を発揮できたとしても十分な放熱ができなければ、動作速度が低下してしまうケースがあり得るためだ。
「POCO F4 GT」ではユーザーがゲームなどをプレイ中でも安定した性能を維持できるように、シャオミ独自の「LiquidCool Technology3.0」を採用する。具体的には、チップセットなどで端末内部が熱くなるヒートスポットを分散した設計を採用し、それぞれのヒートスポットを冷却するためのベイパーチャンバーを備える。実際のゲームでも120fpsなどの高いリフレッシュレートでのプレイでも常に安定した動作が確認できているという。
こうしたスマートフォンの熱対策のうえで、もうひとつ重要なのが充電時の対応だ。「POCO F4 GT」は同梱のACアダプターとUSBケーブルを使うことで、最大120Wの急速充電に対応しており、約17分でのフル充電を実現している。
一般的に、急速充電は本体内部での発熱や、バッテリーへの負荷による耐久性低下が懸念されるが、「POCO F4 GT」は2350mAhのバッテリーを2つ内蔵することで、充電時の発熱を抑えつつ、バッテリーの耐久性にも配慮している。
このほかにもTUV Rheinlandによる安全急速充電システムの認証を取得するなど、充電時の安全性も考慮された設計となっている。
6400万画素メインカメラを含むトリプルカメラを搭載
カメラは本体背面にトリプルカメラを搭載する。前述の通り、背面カメラ部にはRGBライトが埋め込まれているが、その隣には撮影時にも利用できるライトニング(稲妻)デザインのデュアルLEDフラッシュが備えられている。光り方は一般的なスマートフォンと変わらないが、このあたりの演出も本製品の方向性を考えたデザインと言えそうだ。
背面カメラは約6400万画素の1 / 1.73インチのイメージセンサーにF1.9のレンズを組み合わせたメインカメラ、約800万画素 / F2.2で画角120度の超広角カメラ、約200万画素のマクロカメラで構成される。
撮影モードは「写真」「ビデオ」「プロ」「ポートレート」が標準で、「もっと見る」を選ぶと、「夜景」や「デュアルビデオ」、「Vlog」などのモードを選ぶことができる。基本的にはAIでシーンを自動認識するため、普段は「写真」や「ビデオ」「ポートレート」などで撮影しておき、必要に応じて、それぞれの機能を利用すればいいだろう。
ちなみに、「写真」や「ポートレート」は出荷時設定で「ビニング」(4つの画素を1つの画素として撮影し、多くの光を取り込む)が有効にされており、メインカメラでは約1600万画素(4624×3472ドット)で撮影される。暗いところでも明るく撮影できるので、夜景などの撮影も楽しくなりそうだ。
ハイスペックを手頃な価格で楽しめる一台
スマートフォンは2019年の電気通信事業法改正により、一定額以上の割引ができなくなったこともあり、ハイエンドモデルがやや縁遠くなる傾向にある。これに加え、今年は半導体不足や円安、上海のロックダウンの影響などもあり、スマートフォンの価格が全体的に高くなってきている。つい最近もiPhoneの値上げが相次いで発表され、多くのユーザーの関心を集めた。
今回発売されたシャオミの「POCO F4 GT」はゲーミングスマートフォンの市場を狙ったモデルという位置付けだが、2022年のフラッグシップクラスのチップセットを搭載しながら、7~8万円台という手頃な価格を実現した戦略的なモデルでもある。
防水防塵やおサイフケータイといった日本仕様はないが、最大120Wの急速充電をはじめ、ゲームや動画、エンターテインメントを思う存分に楽しみたいというユーザーのニーズにしっかりと応えてくれるハイスペックなスマートフォンと言えるだろう。
デザインは目立ち度ナンバーワンのサイバーイエローが目を引く一方、ソリッドなナイトシルバー、落ち着きのあるステルスブラックも背面のテスクチャー処理とデザインによって、ほかのスマートフォンとは少し違った雰囲気を持つ。
実際に店頭で試すことができないのが残念なところだが、ひと味違ったスマートフォンが欲しいユーザーにとっては魅力的な一台と言えるだろう。
ゲームだけじゃない! 「POCO F4 GT」が価格を超えるポテンシャル - ケータイ Watch
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