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Saturday, September 24, 2022

牛肉の価格も高騰!大手の新規参入と価格競争のトリプルパンチで中小零細焼肉店は生き残れるか?|@DIME アットダイム - @DIME

食肉価格が上昇しています。

急速な円安の進行やエネルギー価格の高騰、コロナショックからの景気急回復でコンテナ輸送船の運賃が上昇したことにより、輸送コストが食肉価格に跳ね返っているのです。また、世界的に需給バランスが崩れ、取引価格そのものも上昇しています。

アメリカの輸入牛肉2022年8月の価格は1㎏当たり5.71ドル。2019年8月は4.65ドルでした。2022年8月は1ドル135円、2019年8月は107円前後で取引されていました。輸入価格は1㎏当たり497円から771円へと1.5倍に跳ね上がったことになります。

食肉価格の高騰は、日本の国民食ともいえる焼肉店の経営を圧迫しています。

直営店主体の焼肉店が大打撃

輸送コストの上昇や円安の影響は、国内の牛肉にも及んでいます。エサ代が急騰しているのです。牛のエサは中国産の稲わらやアメリカの牧草、麦、とうもろこしなどが中心。牛を飼育するコストが上がれば、販売価格に転嫁せざるを得ません。

日本食肉市場卸売協会によると、2022年8月の東京市場のA3和牛の卸売価格は1㎏当たり2,004円。2020年8月と比較して8.4%、2021年8月0.6%上昇しています。

日本食肉市場卸売協会「市況速報」より

ロードサイド型の焼肉店を運営する安楽亭は、2022年3月期の原価率が38.4%となり、前年同期の36.3%から2.1ポイントも上昇しました。

食べ放題の人気店「焼肉きんぐ」を運営する物語コーポレーションは、2022年6月期の原価率が34.7%。前年同期から0.5ポイント上がっています。

※決算短信より筆者作成
安楽亭
物語コーポレーション

安楽亭の原価率が物語コーポレーションと比較して高いのは、安楽亭が焼肉やステーキ店など食肉を扱う業態に特化しているため。安楽亭は2019年2月に吉野家から「ステーキのどん」などを運営するアークミールを買収しました。

業態の幅を広げたのは間違いありませんが、焼肉店とのシナジー効果を高める目的で、周辺事業を強化しました。そのため、食肉価格が高騰するとすべてのブランドでその影響を受けてしまうのです。

物語コーポレーションは主力が「焼肉きんぐ」の焼肉事業ですが、ラーメン店を190店舗、お好み焼き店を24店舗、しゃぶしゃぶ・寿司レストランを77店舗(店舗数は2022年6月末時点)運営しています。

業態をバランス良く広げているため、一部の食材が高騰してもその影響を低減することができました。物語コーポレーションのような大手企業は、まだまだ焼肉店を出店する十分な体力が残っています。

ばら撒き効果も空しく倒産件数は増加

東京商工リサーチによると、2021年度の焼肉店の倒産件数は18件。コロナ禍の2020年度と比べて1.5倍に増加しました。

東京商工リサーチ「2021年度焼肉店倒産状況」より

負債総額1億円以下の倒産が16件で、小規模事業者が圧倒的多数を占めています。飲食店は無利子・無担保のゼロゼロ融資や、雇用調整助成金、時短協力金など、新型コロナウイルス感染拡大対策の支援金を受け取りました。

それでも倒産を抑え込むことができず、増加に転じているのです。

1店舗から数店舗の焼肉店を運営している小規模事業者は、食肉価格高騰の影響を真正面から受けます。エネルギー価格も上がっているため、光熱費も利益を圧迫します。

2022年3月にまん延防止等重点措置が解除され、飲食店は通常営業ができるようになりました。しかし、リモートワークや遠隔授業が進行したことにより、繁華街への人通りは少ないまま。コロナ前の水準には戻り切っていません。

宴会需要も消失しました。時短協力金を失った焼肉店へのダメージは甚大。繁華街に高い家賃を払って出店している焼肉店の淘汰は、今後も進む可能性があります。

更に恐ろしいのが、大手企業による焼肉店への新規参入、価格競争の激化です。

前代未聞の安売りに踏み切ったワタミ

居酒屋を運営するワタミは、2021年5月に日本政策投資銀行から120億円を調達すると発表しました。資金使途として、既存の居酒屋を焼肉店に転換することを挙げていました。

その後、ワタミは居酒屋店を「焼肉の和民」に転換し、「かみむら牧場」を郊外のロードサイドを中心に出店しました。

ワタミが焼肉店に目をつけたのには理由があります。コロナ禍に強い業態であることが、数字で示されていたのです。

日本フードサービス協会によると、2021年の全国の焼肉店の売上高は2019年比で77.5%。洋風レストランの66.6%、和風レストランの65.9%を大きく上回りました。

日本フードサービス協会「データからみる外食産業」より筆者作成

なお、居酒屋は3割にも届いておらず、別業態への転換が急務でした。

居酒屋から焼肉店への転換を図ったワタミですが、外食事業は黒字化できていません。2023年3月期第1四半期の国内外食事業は、45億8,200万円のセグメント損失を出しています。

物語コーポレーションは、2022年6月期に前期比12.4%増となる28億7,300万円の営業利益を出しました。

ワタミは焼肉店の集客に苦戦している可能性があります。

その打開策として低価格戦略を推し進めました。2022年3月から「焼肉の和民」で従来よりも2割安い「全品429円(税抜き390円)」を全店に導入。渡邉美樹会長は「創業から38年を通じワタミ史上最大の値下げになる」と語りました。

最近ではコストパフォーマンスを重視した食べ放題プランを強化しており、90分食べ放題で3,850円(税抜き3,500円)のプランを順次導入しています。

ワタミは2020年6月に直営牧場で18,000頭もの牛を飼育するカミチクグループと業務提携契約を締結。合弁会社カミチクを設立しました。仕入れ価格で強みが発揮できるとはいえ、徹底的な値下げは利益を度外視していると考えて間違いないでしょう。

小規模事業者にとってこの値下げは、脅威以外のなにものでもありません。

しかも、居酒屋を焼肉店に転換しているのは、ワタミだけではないのです。「はなの舞」を運営するチムニーも、居酒屋を焼肉店「牛星」に転換しています。木曽路も焼肉店「大将軍」を買収しました。

食肉価格の高騰、大手の参入、価格競争の激化。小規模焼肉店の苦悩は続きます。

取材・文/不破 聡

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