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Sunday, December 11, 2022

タワマン節税、見直しへ!「市場価格の3分の1」スキーム通じなくなる?|不動産投資の健美家 - 健美家株式会社

政府・与党は、「タワマン節税」できる仕組みの見直しに乗り出す
政府・与党は、「タワマン節税」できる仕組みの見直しに乗り出す


2023年度税制大綱に検討課題として盛り込み、議論へ

相続税評価額が市場価格より低いことをついた節税手法

高額で購入したタワーマンションを相続するとき大幅に節税できる今の仕組みについて、政府と与党が見直しへ動く。この仕組みは、相続税を計算するさいの不動産の評価額が、実際の市場価格より低いことを利用した節税手法だ。ただ、国税当局からみれば、「本来取れるはずの税金を取れない」ことになり、かねてから問題視されてきた。検討課題として、今月15日ごろにまとまるとみられる2023年度与党税制改正大綱に盛り込み、来年、有識者らで検討を始めて、見直しにつなげる考えだ。

まず、タワーマンションを使った相続税の節税方法を具体的にみておこう。タワマン節税の仕組み

そもそも不動産の相続税は、土地と建物の評価額をもとに計算される。

土地は、国税庁が毎年発表している路線価をもとに計算される。マンションの場合、建物がたっている敷地全体の評価額を路線価から算出。マンション内の各戸の専有面積に応じてその金額を分割し、各戸に割り当てる。

通常、路線価は「公示地価」の8割程度。その上、各戸ごと分割されるので、マンションに入っている戸数が多いほど、1戸あたりの土地の評価額は低くなる。

建物の評価額は、地方自治体が計算する固定資産税の評価額と同じ額だ。資材費などからマンション1棟全体の評価額が計算され、やはり各戸ごとにその額が割り当てられる。

固定資産税の評価額も市場価格より低く評価される傾向があるあめ、建物の相続税の評価額も抑えられることになる。

政府によると、東京都内の築9年の43階建てタワーマンションの23階にある部屋(約67平方メートル)の場合、市場価格は1億1900万円だが、相続税の評価額は3720万円で、約3分の1だという。

現金相続なら1億1900万円に、タワマン相続なら3720万円に課税
あまりの価格のかい離に、問題意識が広がる

この例から単純化して考えると、かりに1億1900万円を現金で相続した場合は、まるまる1億1900万円にかかる相続税を納めなければならない。

ところが、1億1900万円で購入されたタワーマンションを相続した場合、3720万円にかかる分の相続税さえ納めればいいことになる。つまり、非常に大きな額の税金を節約できるのだ。

タワーマンションを使った節税方法は、とくに富裕層の間で広がってきた。タワーマンションを販売する業者にも、節税効果の売り文句にするところがあった。

だが、先ほどの例のとおり、市場価格と相続評価額はあまりにもかい離してしている。建築資材の高騰もあって都心などのタワーマンションはますます値上がりしており、かい離の傾向はどんどん進んでいる。

政府・与党は「状況を放置しておけない」と考え仕組みの見直しに乗り出すのだが、後押ししているとみられるのが、今年4月に出た最高裁の判決だ。

今年4月の最高裁判決で、「タワマン節税」が敗訴
今後は相続税評価額の上げ方や地域差への対応議論へ

低い評価額をもとに計算した相続税額が低すぎるとし追徴課税した国税側の判断が争われた案件だが、最高裁は、国税側の勝訴とした。これまで説明してきた仕組みとは少し違うものの、タワーマンションを使った過度な節税は、こんご、司法当局から「NO」と言われる可能性を示唆した判決といえる。

タワマン節税裁判経緯

具体的には、亡くなった父親が3年前に購入した東京都杉並区と川崎市のマンション2棟(購入額は合計で約13億9000万円)を相続した人が、路線価をもとに相続税の評価額を3億3000万円と計算。

父親が購入するとき、その費用にあてるため約10億円の借入金があったことから、相殺し、相続税を0円と申告した。

しかし、国税側は不動産鑑定をもとに2つのマンションの市場価格が合計で約5億2000万円であると評価。追徴課税として約3億円を課したため、相続した人が不服を申し立て、裁判になった。

国税側が勝ったのは、今回のマンション購入の方法が「節税目的」であることがあまりにも明らかで、認めると「税負担の公平」を阻害すると最高裁が判断したためとみられる。

また、路線価による相続税の評価方式が退けられたので、タワーマンションを使った節税が今後、これまでどおりに国税側から認められなくなる可能性もある。

では、政府・与党は、今の仕組みをどう見直していくのだろうか。

23年度の税制改正大綱には、あくまで検討課題として盛り込まれる見込みなので、具体的な議論や制度設計は年明け以降になる。
市場価格が大きく相続税評価額を上回るマンションについて、相続税評価額をどういう手法で引き上げるかが話し合われることになるだろう。

また、税制に詳しいある関係者は「タワーマンションの価格高騰が問題になっているのは、東京都心など一部のエリアだけ。地方の都市にあるタワーマンションを同列に考えるのは無理がある」と話す。

このため、仕組みの変更にあたっては、地域の差をどう織り込んでいくかもテーマとなる。議論の行方に注目したい。

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取材・文:小田切隆(おだぎりたかし)

■ 主な経歴

経済ジャーナリスト。
長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。

■ 主な執筆・連載

  • ニュースサイト「マネー現代」(講談社)
  • 経済誌「月刊経理ウーマン」(研修出版)
  • 「近代セールス」(近代セールス社)など

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