国税庁は30日、相続税の新たな算定ルールを発表した。相続税の課税のもととなるマンションの評価額が「実勢価格」の6割以上に引き上げられる計算で、「マンション節税」を抑止する狙い。2024年1月1日からの適用を目指す。
マンションの評価額は現在、実勢価格の平均4割程度にとどまり、タワーマンションの高層階などで評価額の低さを利用した節税策が富裕層を中心に広がっていた。1964年の通達に基づく現行ルールを抜本的に見直し、税負担の公平化を図る。国税庁が近く通達改正案をまとめ、パブリックコメント(意見公募)を実施する。
新たな算定ルールは、築年数や階数などに基づいて「実勢価格」を計算し、相続税額の根拠となる評価額を引き上げる内容。30日までに開かれた国税庁の有識者会議で了承を得た。
マンション全般が対象となるが、特に影響が大きいとみられるのが総階数20階以上のタワーマンションだ。全国に1400棟以上あり、総戸数は38万戸を超える。
国税庁が全国のタワーマンションについて2018年のデータを抽出調査したところ、平均して実勢価格と評価額に3.16倍の乖離(かいり)があった。「多くのタワマンで税負担が増える」(相続税に詳しい税理士)との見方もある。
有識者会議で示された資料を基に試算すると、都内にある築9年の43階建てマンションの23階にある1室(実勢価格約1億1900万円)を子ども1人が相続した場合、相続税額は約508万円と従来の約12万円から500万円近く増えた。
国税庁が算定ルールを見直すきっかけになったのが22年4月の最高裁判決だ。過度な節税策を否認した国税側の追徴課税を認め、判決理由で「他の納税者との間に看過しがたい不均衡が生じ租税負担の公平に反する」と言及した。
それを受け、政府も23年度の税制改正大綱で「市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と明記。国税庁が23年1月に有識者会議を立ち上げ、算定法の見直しを進めてきた。
同庁は今後、通達改正と並行して、新ルールの周知を急ぐ。
マンション節税 相続税は資産価値を「時価」に基づいて評価し、申告して納税する。マンションの評価額は通常、建物は固定資産税評価額、土地は毎年公表される路線価から計算して合算するが、足元の取引動向を反映しにくく実勢価格を下回りやすい傾向がある。その乖離(かいり)を資産評価に使って相続税額を低く抑える手法として、富裕層などに広く使われている。
特に人気で高価格となる都市部のタワーマンション高層階で評価額との乖離が大きくなり、節税効果が得やすいとされることから「タワマン節税」とも呼ばれる。
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