ビッグマックの今年の値上がり率は、米国より欧州やカナダで大きい。結果として、購買力に基づく各通貨の価値と為替市場での価値は接近した。ビッグマック指数に基づくドルの価値は81円で為替市場より大幅に安い。この状況は日銀の利上げまで続く。
日銀の植田和男総裁は7月、長短金利操作の修正を決めた(写真=ロイター)
米国のインフレは、米国経済に、そして世界の金融市場全体に爪痕を残している。もちろん、米マクドナルドの店頭にもだ。
本誌(英エコノミスト)は1986年以降、ビッグマックの価格を世界中で追跡調査している。各国通貨のフェアバリュー(公正価値)を測る簡便な指標とするためだ。
このビッグマック指数調査によると、2023年7月における米国のビッグマックの中間価格は5.58ドル(約800円)で、1月から4%以上上昇した。前年同月比では8.3%の値上がりだ。12年7月以来の高い上昇率となった。
カナダの値上げ幅は米国の4倍
●ビッグマックの値上げ幅 注:現地通貨による。期間は2023年1~7月 出典: McDonald’s/Refinitiv Datastream/TheEconomist
しかし、他国との比較で言えば、米国人はやや恵まれている。1~7月のビッグマック価格の上昇率は、ユーロ圏と英国では米国の2倍以上、カナダでは4倍近かった(グラフ参照)。
このことは、通貨のフェアバリューについて何を意味するのだろうか。
購買力平価(PPP)説によれば、通貨の基本的価値は、その通貨で購入できる財やサービス(例えばハンバーガー)の量で表される。ビッグマックの価格が上がれば、購入できる数が減る。ゆえに、その通貨のフェアバリューは低下したことになる。
ビッグマックの値上げペースは米国よりも欧州、日本、カナダのほうが速いため、これらの地域の通貨が持つ購買力は、ドルよりも急速に低下している。
各国の値上げペースに差が生じた結果、各通貨のフェアバリューは為替市場における価値に近づいている。
ハンバーガーの購買力に基づいて計算したユーロの1月のフェアバリューは1.1ドルだった。10ユーロで買えるビッグマックの数が、米国において11ドルで買える数と同じだったからだ。しかし、そのとき外国為替市場で、10ユーロは10.9ドルでしかなかった。為替市場において、ユーロは安く、ドルは高く見えた。
しかし、状況は変わった。
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ビッグマック価格で見れば1ドル81円、為替相場はとんでもない円安 - 日経ビジネスオンライン
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