国内のスマートフォン市場で約半数のシェアを持つ米アップルのiPhone(アイフォーン)。その最新モデルとなる「iPhone15」がまもなく発表される見通しだ。気になるのがその価格。近年値上げが続き、現行の「14」は一番安いモデルで約12万円となっているが、「15」はさらに値上がりする可能性がある。一体何が原因なのか。(岸本拓也)
アップルは12日(日本時間13日未明)にカリフォルニア州の本社内で毎年恒例の製品発表会を開き、新型の15シリーズを発表する見通しだ。ITジャーナリストの三上洋氏は「事前のリーク情報では、(ライトニング端子から)タイプCへの移行や、カメラの高画質化などのマイナーチェンジにとどまり、びっくりするような変更はなさそうだ」と話す。
性能の微修正なら価格はそれほど変わらないのでは、と思いきや、三上氏は「日本での価格は最も高いモデルで30万円を超える可能性がある」とみる。
大きいのは為替レートだ。直近では1ドル=146円程度の円安ドル高水準にあるが、日本でのiPhone販売価格は136円程度で設定されている。たとえば、14シリーズの最上位モデルの価格(いずれも税抜き)は米国で1599ドル、日本では22万円弱だが、実勢レートで試算すると23万超となる。
三上氏は「今は日本だけ安売りしている状態。実勢レートに合わせて値上げされても不思議ではない。カメラの高画質化に伴うストレージ(保存容量)の増加や、世界的な部品や人件費の高騰でドルベースの本体価格が値上げされれば、日本の価格もはね上がる」と指摘する。
ただでさえ、近年の円安を反映して、日本でのiPhone値上げは著しい。価格比較サイトnukeniが分析した過去3年のシリーズ最安モデルの値上げ率をみると、日本は26.9%(約2万5000円)と、世界37カ国中、3番目に高かった。
一方で、この間、米国での価格は変わっておらず、問題は、やはり円の実力のなさと言えそうだ。通貨の実力は「実質実効為替レート」という指標で表される。国際決済銀行(BIS)によると、最新7月のレートは74.31(2020年=100)と、1970年並みの低水準となっている。
この指標は、日米などの主要国の物価がどのくらい上がったのかや、ドルやユーロなどの為替水準などを加味して算出される。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「為替市場で円安で進んでいることに加えて、海外では日本以上に物価が高くなっていて、実質的に円の価値がさらに下がっている。このため、海外の商品価値が押し上げられている」と話す。
iPhoneにとどまらず、食料品やガソリン代、電気代などが値上がりし、生活にかかる負担は増している。一方で賃上げは不十分で、物価変動の影響を加味した直近6月の実質賃金は、前年同月比1.6%減と15カ月連続の前年割れとなっている。
日本全体の購買力低下が懸念される中で、iPhoneは今後も「王者」でいられるのか。IT調査会社MM総研の横田英明副所長は「総務省の施策によって、かつての『1円スマホ』とか、販売奨励金による大幅な値下げはできなくなった。端末の値上げも相まって、利用者の負担感は以前より強まっている」と指摘した上で、こう続ける。「ただ、日本のiPhone人気は根強い。無理して高級機種を買わなくても、廉価版や旧型、中古など値ごろ感のある端末に人気がシフトしていくのではないか」
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