特集 価格決定力をどう上げるか
インフレが長期化する兆しが見え、原材料やエネルギー、人件費高騰が続く。価格転嫁、値上げができなければ人材が流出、供給力の崩壊が現実になりかねない。適正な価格決めと、価格の実現にどう取り組むのか。さまざまな業種の経営者にそのアプローチを学ぶ。
(写真/PIXTA)
<特集全体の目次>
・日東物流が挑む「労働環境の改善は適正な価格が大前提」
・・BtoB企業の価格交渉はまず「変動費」、次に「付加価値額」
・ITで見積もり自動化、値引きなし…価格競争を脱した会社の値決め(11月8日公開)
BtoB企業の価格交渉のポイント
インフレが長期化する中、コスト上昇分の価格転嫁だけでは十分ではない。中小製造業向けのコンサルティングを手がけるゼロプラス代表取締役の大場正樹氏は、中小企業の価格交渉の有効なアプローチとして「変動費スライド制」を提唱する。
大場 正樹(おおば・まさき)
ゼロプラス代表取締役。1975年生まれ。大学卒業後、大手非鉄金属商社に14年間勤務。中小製造業向けのコンサルタントとして独立、2014年にゼロプラスを設立。著書に『インフレ時代を生き残る下請け製造業のための劇的価格交渉術』(幻冬舎)
多くの中小企業はこれまでに、取引先に対して何度かの値上げには成功してきているでしょう。世の中としても、ある程度の値上げや価格転嫁を容認する考えは一般的になっています。
では、そうした中小企業の経営者がいま一番悩んでいることは何か。値上げにいったん成功したとしても、インフレが続いて原材料費や外注費などがまた上がれば、利益分となる付加価値額が削られてしまうということでしょう。
人手不足の影響も深刻です。日本商工会議所の調査でも中小企業の7割が人手不足と答えています。さらに10年後は700万人もの労働者が減ることが確定しています。人材確保のために、利益が出ているなら今すぐにでも賃上げをしたほうが得です。そのためにも賃上げの源泉として付加価値額は絶対に守る必要があります。
そこで、価格交渉は2段階に分けて実施すべきです。
まずは、原材料費や外注費など変動費を連動させる形で見積もり価格を決める「変動費スライド制」に取引を移行します。いったん契約すればコストが上がるたびに価格交渉をしなくてよくなります。
変動費スライド制にすることで余力が出てくるので、次にいよいよ本丸である付加価値額を上げさせてもらう交渉をする。この2段階のアプローチです。
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BtoB企業の価格交渉はまず「変動費」、次に「付加価値額」 - 日経ビジネスオンライン
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