“円安”が暮らしを直撃。前年比60%値上がりしたものも
――2023年は“記録的な値上げラッシュ”といわれるほど、さまざまなものが値上がりしましたが、中でも一番値段が上がったもの・サービスを教えてください。永濱さん:一番は「宿泊費」ではないでしょうか。2022年度と比較すると60%くらい上がっています。首都圏や人気の観光地を中心に驚くほど値段が上がりましたね。
宿泊費が高騰した要因としては、コロナが終息し、観光客が爆発的に増えたこと。特に、円安の影響もあって、インバウンドが復活したことも大きいですね。あとは、人手不足で働き手を確保するために宿泊費を上げて、働く人の給料も上げているということも考えられます。
そして、もう一つ、値上げ幅が大きかったのが食料品です。2023年の消費者物価指数は前年に比べ3%くらい上昇しましたが、やはり食料品の値上げが伸び率を上げた大きな要因といえるでしょう。
――食料品の中で、前年より大きく値段が上がったものは何でしょうか?
永濱さん:食料品の中で最も上昇幅が大きかったのは果物で19%。続いて乳製品や卵類が14.2%、そして生鮮野菜が10.5%上がりました。
値上がりの要因として、共通するのは“円安”でしょうね。輸入に頼っている果物や野菜は、やはりダイレクトに円安の影響を受けますから。あと、記録的な猛暑日といった、天候不順も挙げられます。卵の値段については、餌代の高騰や鳥インフルエンザの流行で供給量の減少など、いくつかの要因が重なったことが価格高騰の要因といえるでしょう。
値上げラッシュが家計を直撃
値上がりばかりではない!安くなったもの・サービスにも注目
――全体的に値上がりしたものが多い中、値段が下がったもの・サービスはありますか?永濱さん:携帯の通信料は、価格が下がった代表例ではないでしょうか。私も以前は、家族4人で月4万円くらい通信料を支払っていましたが、通信会社を変えてからは、家族4人で月1万円くらいになりましたから。
あとは、スポーツジムなども安く利用できるところが増えましたよね。例えば、今まで定期的に運動や筋トレをしたいと思ったら、月1万円ぐらいお金を払い、週1、2回ジムに通うのが、当たり前ではなかったでしょうか。でも最近は、月3000円くらいで24時間利用でき、使い放題のジムが増えていますよね。
もちろん高価格のジムやスポーツクラブは、お風呂やサウナなどがあったり、トレーニング設備も充実していたりします。ですが、そこにこだわらなければ、半分以下の値段でジムを利用することができます。
――値段が上がっているものばかりに目が向けられますが、値段が下がって利用しやすくなったものやサービスも確かにありますね。
永濱さん:あと服の値段も、ブランドものにこだわらなければ、結構安く手に入るようになったのではないでしょうか。最近は、中国よりも人件費が安いミャンマーやカンボジアなどに生産拠点を移し、製造していたりしますから。
一方で海外の高級ブランドのものでは、10年くらい前に比べて値段が倍くらいになっているものもあります。あえて大量生産せず、値上げしていたりもします。企業からすると、売れるのであれば、できるだけ値段を高くした方が儲かるわけですから(笑)。
2024年も物価上昇は続く
――2024年も引き続き、物価は上がり続けるのでしょうか?永濱さん:全体的に物価は上がっていくと思いますね。ですから、絶対必要なものや高額なものなどは、できるだけ早く買っておいた方がいいと思いますよ。
これまでの日本は、「物価も上がらないけど、給料も上がらない」という異常な状態だったといえます。基本的に日本以外は、物価が上がっている国が多いですから。ここにきて、日本経済もようやく正常に戻りつつあると思います。
ただし、2023年度に比べると、物価上昇の伸び率は鈍化するでしょう。円安が進むことが予想されるのと、あとは賃金の伸び以上に物価が上がり続けるというのは持続しません。やはり、家計の購買力が下がりますからね。こういったことから、2024年も物価は上昇するけれど、伸び率は緩やかになると思います。
教えてくれたのは……永濱利廣さん
第一生命経済研究所首席エコノミスト。早稲田大学理工学部工業経営学科卒業、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年に第一生命保険入社、日本経済研究センターを経て、2016年より現職。専門は経済統計、マクロ経済分析。著書に『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』(講談社現代新書)等。
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