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Tuesday, July 2, 2024

記録的な円安なのに「100円ショップ」が価格を維持できるワケ 「ダイソー」と「3COINS」に聞いてみた - goo.ne.jp

100円ショップの国内市場は1兆円を超えている。画像はイメージ(PIXTA)

 物価高が続く中、いわゆる「100円ショップ」が絶好調だ。帝国データバンクの調査によると、2023年度推計の「100均」市場は初めて1兆円を突破し、店舗数も直近10年間で1.5倍になったという。日本人の節約志向の高まりが背景にあるとされるが、本来、円安のあおりを最も受けやすい「100円ショップ」が今でも低価格を維持できているのはなぜか。「100円ショップ」のダイソーと「300円ショップ」の3COINS(スリーコインズ)を取材した。

 帝国データバンクのリポートによると、2013年度の「100均」の市場規模は約6530億円で、大手4社の店舗数は5887店だった。それが23年度は1兆200億円の市場規模が見込まれ、店舗数は推定値も含めて約8900店に増えた。「100円ショップ」は、今の日本ではめったに見られない“右肩上がり”の成長を続けている。

 近年の物価高は100円ショップの追い風になっている。東京23区の場合、昨年1年間の消費者物価指数は生鮮食料品を除き、速報値で前年比3.0%の上昇。1年間の上昇率が3%台となるのは、第2次オイルショックの影響があった1982年以来、41年ぶりだという。ただ、これに賃金の上昇が追いついていないがゆえに、消費者は少しでも生活を楽にしようと100円ショップを頼りにする。この構図は実にわかりやすい。

 だが一方で、100円ショップのビジネスモデルは、円安では分が悪い。商品の多くが海外生産品であるため、円安により輸入コストや原材料費がかさめば「100円」で販売することは難しくなるからだ。

ブランド力に磨きをかけてきた3COINS(画像=同社提供)

■トータルのブランド力が重要(3COINS)

 物価上昇は追い風で、円安は向かい風ーーこの相反する状況を業界大手のダイソーと3COINSはどのように捉え、低価格の維持に努めているのか。

 まず、業界全体が好調の理由について、ダイソーのグローバル広報課、後藤晃一課長はこう話す。

「買い物をする際の“入り口”として機能している自負がありますが、その分、消費者の皆さんが商品を選ぶ基準も厳しいと痛感しています。100円で売るだけでは駄目な時代になっており、100円以上の価値を感じていただくことは大前提です。そのためには時代のニーズに対応することが何より大切で、コロナ禍の時はマスクとウェットティッシュを100円の枠内で販売すると反応がありました。アウトドアブームの時も、私たちができる範囲で関連商品などを用意しました。すると防災グッズとしても評価されるなど、思わぬところでご好評いただきました」

 消費者ニーズを丁寧に拾おうとするダイソーに対し、3COINSのブランドディレクターの肥後俊樹氏は「ブランド力」を強調する。肥後氏は「“3COINSでいい”ではなく、“3COINSがいい”と言われるようにならなければならない」と語る。

「コロナ禍をへて、日本人の消費傾向が変わったと実感しています。“おうち需要”の増加で日常生活に必要な生活雑貨が改めて脚光を浴びました。その結果、今は『お金をあまりはかけずに、日常生活を充実させたい』というニーズが増えています。それに対して手に取りやすい価格で、かつ“ちょっと幸せ”を感じてもらえる提案をすることが3COINSの役目です。消費者の心の奥にあるニーズに響く優れた商品の開発は大前提で、さらには、商品価値を感じてもらうための店舗の内装、公式サイトやeコマースの利便性、SNSでの積極的な情報発信など、3COINSトータルとしてのブランド力が重要になると考えています」

時代のニーズに徹底的に対応することで規模を拡大してきたダイソー(画像=)同社提供

■円安も円高も同じようにリスク(ダイソー)

 次に、急激な円安にはどう対処していくかを聞くと、やはり好対照な回答が返ってきた。

 ダイソーの後藤氏は「弊社にとっては過度の円安も円高も同じようにリスクで、それに立ち向かってきた歴史があります」と話す。

「100円や300円という価格の上限が決まっており、その中で何ができるかを考え抜いています。例えば、1つの商品でも生産国の見直しは常時行っています。国外生産が効果的なら海外生産の商品を輸入しますし、国内の生産工場のほうが低コストだと判断すれば国内で調達します。国内では店舗の無人レジ化を進めていますし、マレーシアでは大型物流拠点を整備しています。パッケージの簡素化、船便でコンテナの積載効率を最大に高める方法など、ありとあらゆることをやっています」

 一方の3COINSは「極度の円安が弊社の生産コストを直撃しているのは事実です」としたうえで、こう話す。

「ただし、人件費や流通経費の世界的な高騰など、円安だけを原因にできない状況も生まれつつあります。さらに最近の社会情勢を考慮しますと、一部の商品については値上げを検討すべきタイミングかもしれない、と考えています」(肥後氏)

 ダイソーはすでに海外進出を果たしている。一方の3COINSは現在は国内展開だけだが、にもかかわらずアジアを中心に認知度が上がってきている。そのため海外での販路を期待されることも少なくないという。

「日本のライフスタイルは、世界的に見ても特に丁寧に組み立てられていると考えています。そこには生活を豊かにしてくれる生活雑貨が求められます。私たちは“ちょっと幸せな日常の提案”というコンセプトを通じてそのニーズに取り組んできました。そこで蓄積したノウハウを強みに、世界中で喜んでもらえる3COINSになれればうれしいですね」(肥後氏)

■目指す方向性の違い

 ダイソーの目標は2030年に自社だけで売り上げ1兆円、店舗数1万店だという。企業規模の大きさを最大限に発揮させる経営戦略と言えるだろう。

 一方、3COINSの戦略は独自のブランド力を磨きに磨くこと。3COINSならではの切り口で開発されたプロダクトと強力な情報発信の掛け算で消費者の購買意欲を喚起させる戦略だ。

 円安という向かい風に立ち向かっていることは変わらないが、それぞれに目指している方向には違いがあるのもまた面白い。

(井荻稔)

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