この記事のポイント
・NY金価格は2,400ドルを目指すも、レンジ相場からの脱却に苦慮している
・レンジ相場からの脱却するシグナルの一つが、2,380の「サポート転換」である
・米CPIでインフレ懸念が後退すれば、レンジの上方ブレイクが焦点となろう
・NY金、目先注目のチャート水準について
NY金、注目のチャート水準
レジスタンスの水準
・2,380:レジスタンスの水準
・2,376:フィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準
・2,370:レジスタンスの水準、半値戻しの水準
・2,360:フィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準
サポートの水準
・2,341:50日線
・2,334:75日線
・2,320:6月28日~7月2日の安値水準
レンジ相場を意識する状況が続く
スポットのNY金価格(XAU、以下金価格)は先週5日、IGコモディティレポートで注目している重要レジスタンスの「2,380」レベルを大陽線で上方ブレイクした。しかし、2,400ドルの手前で上昇が止められ、週明け8日の市場ではあっけなく2,380を下方ブレイクした。
中国人民銀行(中央銀行)が、5月に続いて6月も金準備の積み増しを行わなかったことが金価格の重しとなった。また、投機筋の買いが一服している状況も金価格が上昇トレンドへ回帰できない要因の一つである。
いずれにせよ、2,380レベルが「サポートラインの転換」に失敗した状況は、金価格が強気相場へ回帰し、新たな上昇の局面へシフトするにはまだ時間がかかることを示唆している。
この点はモメンタム(パラメータ:14日)の動きも示している。現状、ゼロラインを上回る状況にはあるが、トレンドに勢いは見られない(下のチャート、赤矢印を参照)。また、RSIはデッドクロスを形成するムードにある(下のチャート、赤矢印を参照)。
上で述べた状況を総合的に考えるならば、金価格はレンジ相場の継続を意識する状況にある。
NY金価格のチャート:日足 24年3月以降
出所:TradingView
50日線と75日線の攻防
金価格(XAU)のレンジ相場が続くと予想する場合、目先の下限はIGコモディティレポートで何度も取り上げている2,300ドルとなろう。テクニカルの面では半値戻しの水準「2,298」にあたる。
2,300ドルをトライするシグナルとして注目したいのが、50日線と75日線の攻防である。
前者の50日線をトライする場合は、サポートラインへ転換するかどうか?後者の75日線をトライする場合は、サポートラインとして意識される状況が続くかどうか?がそれぞれ焦点となろう。
これら移動平均線は2,330レベル(75日線)から2,340レベル(50日線)で推移している。よって、2,330-40レベルをサポートゾーンと想定しておきたい。
金価格が下値をトライしても、上のゾーンが相場を下支えする場合は、2,300レベルから下限の水準が切り上がることになる。よって、これら2つの移動平均線で相場が反転する場合は、2,380ドルと2,400ドルを再びトライするシグナルと想定しておきたい。
NY金価格のチャート:日足 24年3月以降
出所:TradingView
10ドルレンジの攻防
一方、金価格(XAU)の反発局面では2,380ドルの攻防ー突破とサポート転換が焦点となろう。すぐ下の水準2,376ドルはフィボナッチ・リトレースメント61.8%の水準にあたる。2,375-80をレジスタンスゾーンと想定しておきたい。
金価格が2,380ドルをトライするシグナルとして2つのチャート水準に注目したい。まずは、直近高安のフィボナッチ・リトレースメント23.6%の水準「2,360」である。昨日のNY時間では、この水準がレジスタンスラインとして意識された。
次の注目ポイントは、2,370ドルである。この水準はレジスタンスラインへ転換する可能性がある。また、2,371ドルは半値戻しの水準にあたる。
2,360ドル、2,370ドルそして2,380ドルと、金価格が反発する局面では10ドルレンジの攻防を意識したい。
分足チャートのストキャスティクスとRSIで相場の過熱感を確認しながら、これらオシレーター指標が買われ過ぎの水準でデッドクロスの状況にある時に、金価格が上で述べたレジスタンスの水準をトライする局面では、反落相場を意識したい。
NY金価格のチャート:15分足 7月5日以降
出所:TradingView
レンジブレイクの鍵は米CPIに?
今のレンジ相場を金価格(XAU)がブレイクするきっかけとして目先注目したいのが、11日に発表される6月の米消費者物価指数(CPI)である。
注目はコア指数の動向である。現時点での市場予想は、前月比と前年同月比でともに5月から横ばいの見通しにある(下のチャートを参照)。また、FRBが注視する「スーパーコア」のインフレ率(住居費を除いたサービス価格)の動向も重要となろう。
これらの指数でインフレの粘着性が示される場合は、米金利に再び上昇の圧力が高まることが予想される。米金利の上昇は、外為市場で米ドル買いの要因となろう。ゆえに、強い米CPIは金価格の下落要因となろう。
一方、米CPIでインフレが鈍化の傾向にあることが確認される場合は、「米金利の低下→米ドル安→金価格の上昇」を予想する。
アメリカ消費者物価指数(CPI)の動向:23年6月以降
レンジ相場を上方ブレイクする可能性
現在、短期金融市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が9月と12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを行う可能性を意識する状況にある。
年2回の利下げ期待を高めたのが6月の米雇用統計だった。4月と5月の非農業部門雇用者数が下方修正され(合計で11万1000人の下方修正)、失業率は4.1%まで上昇した。
サーム・ルール※の経験則に従うならば、失業率は景気後退の可能性が高まっている状況を示唆していると捉えることもできる。
この状況で6月の米CPIがインフレ懸念を後退させる要因となれば、金価格はレンジ相場の上方ブレイクを目指す展開が予想される。
※サーム・ルール:直近3ヶ月の平均失業率が、過去12ヶ月の最低値から0.5ポイント上昇したとき、景気後退の可能性が高いという経験則
サーム・ルール景気後退指標の動向:23年以降
NY金価格2400ドル手前で失速 レンジ相場脱却の鍵は米CPI?目先の見通し - IG証券
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