[北京/上海/ハノイ 20日 ロイター] - 中国政府は銅や鉄など工業コモディティーの価格高騰を抑えようと対策を打ち出した。しかし当局が消費を抑制し、経済成長の鈍化を引き起こす恐れがある措置に踏み込まない限り、その場しのぎに終わりそうだ。
中国国務院(内閣に相当)は19日、コモディティー価格の「不合理な」上昇を抑制し、消費者に影響が及ぶのを防ぐため、需給両面で管理を強化すると発表。20日に工業用金属相場全体が大荒れとなった。
金属は中国の力強い成長により、製造と建設の両業界で消費が好調だ。一方、主要産地は生産面の問題を抱え、供給が全般にひっ迫しており、実需を抑制しない限り価格抑制の効果は限られそうだ。
HSBCのアジア経済調査部門ヘッド、フレデリック・ニューマン氏は「コモディティーについて中国当局は板挟みの状態だ。価格を安定させるか、もしくは下落まで持っていくためには需要を抑える必要がある」と指摘。「増産か在庫放出で供給を増やしても価格抑制の効果は一時的だ。もちろん需要抑制の問題は、成長を損なうことだ」と述べた。
INGのシニア・コモディティ・ストラテジスト、ウェンユー・ヤオ氏は、供給面の硬直性が続けば、景気を悪化させずに需要を冷やすことは不可能だと指摘。「完全な解決策はない」と述べた。
銅は主要生産国であるチリの鉱山でストが起こる可能性がある。鉄はブラジルの鉱業大手バーレの鉄鉱石生産の回復が遅れているため、年内は金属全体の供給がひっ迫する見通しだ。
<政府は対策に躍起>
中国では主要金属の年初来の価格上昇が3割余りに達し、先月は工場出荷価格が急上昇し、生産の伸びが鈍化した。政府はこれを受けて相場が過熱しているセクターに警告を発した。
政府は具体的な価格抑制策として、輸出入や在庫の管理強化、現物およびデリバティブ市場の監視強化、価格を引き上げる言動の取り締まりなどを挙げた。
中国は戦略備蓄を公表していない。過去に国内の生産者を支援するため、アルミニウムや亜鉛などのコモディティーを買い入れ、銅などの値上がりを抑えるため一部を売却した。
ANZのコモディティアナリスト、ソニ・クマリ氏は「中国が価格抑制のために金属在庫を放出する意向を示したということは、短期的に価格を落ち着かせるのに十分な在庫を持っていることを示している。ただ、長期にわたり市場に影響を持つことはない」と述べた。
INGのウェンユー・ヤオ氏は「国家備蓄で市場の供給はかなり増えるが、それで問題が完全に消えるとは思わない。大規模な在庫放出を頻繁に行うのは賢明ではないし、特に銅など戦略的な金属の場合はそうだ」と述べた。
中国政府は買いだめ行為の取り締まりを行う見通しだが、在庫が全般的に低水準にあるため、効果は一過性にとどまりそうだ。
香港の仲介業者は「中国政府は2つの心配を抱えている。1つ目はエンドユーザーのコモディティー価格が上昇し、インフレを招くこと。2つ目は価格上昇がエンドユーザーに転嫁されず、下流の製造業者が生き残れなくなって操業を停止し、失業問題が発生すること。政府はこの2つの間で政策のバランスを取らなければならない」と述べた。
国家発展改革委員会(発改委、NDRC)は先に、鉄鋼と鉄鉱石の価格は安定し、下半期には低下するとの見通しを示した。
鉄鋼産業の拠点となっている唐山市の当局は先に不正の取り締まり強化を警告、商品取引所も価格上昇を抑える措置を講じている。
(Shivani Singh記者 Emily Chow記者 MaiNguyen記者)
アングル:板挟みの中国政府、工業用商品価格高騰への対応に苦慮 - ロイター (Reuters Japan)
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