世界市場で石炭価格が軒並み急騰している。北アジアで夏季需要が急増しているほか、中国やインドネシアなど主要産炭地での供給減少を反映している。こうした状況は、気候変動対策による打撃を受けていた石炭業界に思わぬ恩恵をもたらしている。
今回も発端は中国
例によって、今回の価格高騰も世界の石炭供給量の半分を生産・消費している中国に端を発している。中国経済は新型コロナウイルス流行の影響からいち早く回復し、最近は他国経済の持ち直しが成長をさらに加速させている。一方、中国では死者の出る炭鉱事故が多発し、当局による石炭部門への安全性検査が厳格化している。
昨年の厳冬に続き、例年以上に暑い夏の到来に伴う電力消費の増加も石炭の需給逼迫(ひっぱく)に拍車をかけている。昨年12月には一部の省で工場への電力供給の遮断を迫られ、ここ数週間でも南部の20以上の都市で同様の措置が講じられた。
中国政府も高騰に一役買っている。政府は関係が悪化しているオーストラリア産石炭の輸入制限を導入している。これを反映し、中国の一般炭先物価格は5月に前年同月比50%以上上昇し、過去最高水準を記録した。
中国以外の石炭の主要産地でもトラブルが相次いでいる。現在、中国の石炭輸入先第1位であるインドネシアは豪雨により生産が減少した。米金融大手モルガン・スタンレーの6月の社内メモによると、インドネシアの石炭総出荷量は豪雨の影響により新型コロナ前の水準から約15%減少。シンガポール証券取引所のインドネシア産石炭の先物価格は5月に過去最高値を更新した。
コロンビアでは同国最大の炭鉱セレジョンが5月、鉄道と港湾の封鎖で操業停止を余儀なくされた。同社は5月末、徐々に積み出しを再開する方針を示した。
北米調査会社S&Pグローバル・プラッツの石炭・アジア電力分析部門の責任者であるマシュー・ボイル氏によると、今年の欧州の石炭価格は例年よりも厳しい冬の寒さや港湾の在庫減少により上昇している。北西ヨーロッパの石炭価格は年初来約20%上昇し、1日に約2年ぶりの高値を記録した。ボイル氏は「欧州の主要な石炭輸入先であるコロンビアからの輸出が途絶えた一方、ロシア産の石炭はアジアに向けられている」と指摘する。
中国の輸入制限にもかかわらず、オーストラリアの石炭先物価格も日本や韓国、台湾の輸入によって急上昇している。ニューカッスル港出し高品位一般炭のスポット価格は5月末に2011年以来の高値を記録した。
「投資には適さず」
問題は足元の世界的な価格高騰がいつまで続くかということだ。米銀ゴールドマン・サックス・グループは6月、堅調な需要とオーストラリアでの新規の鉱山開発事業の認可の難しさを理由に21年と22年のニューカッスル港出し一般炭の価格予想を引き上げた。一方、モルガン・スタンレーは供給が回復に向かえば市場がだぶつき、北半球で価格調整が起こると見通している。
IHSマークイットの石炭・金属・鉱山担当の主任研究員、ジェイムズ・スティーブンソン氏は「短期的に需給は逼迫するものの、年後半には供給が大きく改善するだろう。今回の高騰は投資には適さない。中期的なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は依然として厳しい」と指摘した。(ブルームバーグ Dan Murtaug、Vanessa Dezem)
今回も発端は中国、石炭業界“棚ぼた” 世界市場で価格が軒並み高騰 - SankeiBiz
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