――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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今年はあらゆるものの価格が上昇しているようだ。中国の豚肉価格は、コロナ禍とは異なる公衆衛生上の危機が後退する中、その流れに逆行している。これは世界の豚肉業界にとって厳しいニュースだが、各地の豚肉バイヤーにとっては歓迎すべき小康状態だ。
中国の豚肉価格は1月以降、半値に下がった。アフリカ豚熱(ASF)の流行で2年間にわたって価格が急騰した末に、大きな変化がやってきた。ASFによって中国の養豚数は4割余り減少した。2021年初めにも感染が再燃したものの、その後は落ち着いている。まだ時に小規模な感染がみられるが、全体的な状況は2019年に比べて著しく改善している。
今年の相場反転は「高値の良薬は高値」の典型的な例にみえる。この1年で生産量も輸入量も増え、桁外れの利益が上がっていた。政府によると、中国の養豚数は5月、前年同月比23.5%増となった。2020年の輸入量は前年比で倍増した。今年初めに発生した感染拡大を受け、一部の農家は早めに豚を処分し、豚肉の供給が前倒しされた。
また、農家が育てる豚は以前より太っている。痩せた豚よりもキログラム当たりの価格が低いにもかかわらず、豚肉価格の上昇によって、余分な餌代が正当化されたのだ。ゴールドマン・サックスによると、4月と5月の生産量のうち、150キログラムを超える大型の豚が30%以上を占めた(通常のサイズは110キログラム)。価格が下がり始めたことで一部農家が売り急ぎ、価格下落のスパイラルに陥った。
こうした全てが世界の価格に波及する可能性がある。輸入業者は現在の市場ではもうかりそうにないため、輸入は減速しそうだ。ラボバンクのシニアアナリスト、パン・チェンジュン氏は、中国の豚肉輸入量が2020年の水準から10~30%減少すると予想する。中国は2020年、世界の豚肉輸入量の約半分を占めていた。
ただ、価格はすぐに底入れするかもしれない。ゴールドマン・サックスの推計では、全ての生産者、特に小規模な生産者は、現在の豚肉価格で利益を得るのに既に苦労している。このため下半期にはより抑えた供給になるだろう。農家は疫病対策に資金を費やす必要があるため、操業コストが上昇している。政府は今月、豚肉市場で安定した価格を維持することを約束した。
中国で高騰していた豚肉価格は、世界の豚肉業界を巻き込んでついに地に落ちた。だが幸いなことに、年内のさらなる急落の公算は小さくなっている。
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中国の豚肉価格、天井から急降下 - Wall Street Journal
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