無印良品がリノベーションして販売する築47年の一室。外観のビンテージな雰囲気、一歩中に足を踏み込めばまるで新築というギャップがリノベ物件がもつ独特の魅力だ。
撮影: 横山耕太郎
無印良品の住宅事業を展開するMUJI HOUSEは2021年7月から、団地やマンションの一室をリノベーション(大規模なリフォーム工事)をして販売する事業をスタートさせた。
MUJI HOUSEではこれまでも、賃貸物件のリフォームや、個別の住宅リフォーム事業を持っていたが、今回の新事業では“無印良品が物件を取得し、リノベーションを終えた状態で販売する”という、さらに一歩踏み込んだビジネスモデルになっている。
まずは関東で2住戸(横浜市内と調布市内の団地の一室)を発売するが、今後は物件数を拡大し、数年以内に年間100件ほどの販売を目指すという。
リノベ物件の第1号となる、築45年超の一室を現地で取材した。
玄関を開けてびっくり「MUJIのリノベ住宅」
港南台めじろ団地。棟と棟が離れており、開放感がある。
新宿駅から電車で約1時間。JR根岸線「港南台駅」から、歩くこと約15分の位置にある横浜市港南区の「港南台めじろ団地」が目的地だ。
団地一帯は、5階建の横に長い長方形の集合住宅が立ち並ぶ。ただ、集合住宅の間隔が広く取られており、また団地内には緑も多いため、独特の開放感を感じられる立地だ。
無印良品が手掛けたのは、最上階・5階にある広さ51.18平方メートルの部屋。ベースとなる建物は1974年に建設され、築年から47年が経過している。
玄関を開けてまず驚くのが、真正面に靴棚があり、左右どちらにも進める作りになっていることだ。
玄関の左右に入口があり、回遊できる設計になっている。
撮影: 横山耕太郎
左に行けばリビング、右に行けば洗面台に進めるため、すぐに手洗いができる構造になっている。
収納のないキッチン
UR都市機構と無印良品が共同開発したキッチン。キッチンの下の空間が空いているのが特徴。
撮影: 横山耕太郎
リビングに入り、すぐに目を引くのが白色で統一されたキッチンだ。
キッチン下は自由に使える空間になっており、ごみ箱などを配置できる。一般的なキッチンであれば、こういった場所に食品や調理器具を収納する棚があるが、固定の収納スペースはあえて備え付けない。
キッチンの壁際に設置された棚。
撮影: 横山耕太郎
コンクリート打ちっぱなしとした壁には、取り外し可能な棚を設置している。
ちなみに、この部屋にある無印良品の棚や家具は、販売価格に含まれており、寝具や家電を用意すれば生活できる状態という。
壁をなくして間取り変更
リノベーション前の住居。キッチンの壁の向こうにもう一部屋ある間取りだった。
提供:MUJI HOUSE
リノベーションのため、内装を解体した時の様子。
提供:MUJI HOUSE
リフォーム前には2LDKだった間取りは、1LDKに変更。個室とLDKを隔てていた壁を取り除いた。
「他の物件でも、壁をなくすことで外の光が部屋の中に届くようにデザインしている」
MUJI HOUSEリノベーション事業部の2級建築士・浅見一也さんはそう話す。
リノベーション後は、壁をなくしてリビングの広さを確保した。
撮影: 横山耕太郎
寝室を想定している個室にも、備え付けの収納はなく、取り外し可能な棚が設置されている。
リビング隣の個室の収納も、取り外し可能な棚を設置している。
撮影: 横山耕太郎
「この部屋は20代から30代の2~3人暮らしを想定している。寝室にはリモートワークに対応できるように、仕事用のデスクを置いたが、コロナが落ち着けば、今後また生活スタイルが変わることも予想される。収納エリアや机も、自由に配置ができるように設計している」(浅見さん)
築年数が経過した躯体でも寒くない「断熱性の高さ」
2重になり、断熱性を高めた窓。
MUJI HOUSEによると、無印良品の統一されたデザイン性に加え、断熱性が高いこともリノベーション物件のセールスポイントだという。
既存の窓を2重窓にして遮音・断熱性を高めたほか、壁には断熱性の高い素材を使用することで、冷暖房の効率を高めている。
「新型コロナの影響で在宅時間が長くなり、住環境の快適さを求める声は増えているように感じている。こうした意識の変化は、無印良品の物件には追い風になる」(浅見さん)
無印良品が「築47年の団地」をリノベーション。価格1990万円の物件を現地取材 - Business Insider Japan
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