ジビエは、有害鳥獣駆除などで捕獲した野生鳥獣を資源として生かそうと、政府が利用を促してきた。利用量は年々拡大してきた。農水省によると、2019年度は2008トン(自家消費向けなどを含む)で、16年度より約6割増えた。同省は、25年度に4000トンへと倍増させる目標を掲げている。
食肉処理施設が販売した金額は19年度が37億3700万円で、同25%伸びた。利用量の増加に比べて販売金額の伸びが小さいのは、食用より価格が安いペットフードでの利用が増えたからだ。19年度は前年度より37%増加。ジビエ利用全体の4分の1以上を占めた。価格も19年度が1キロ約570円で、同6%高くなった。
食用の利用量は19年度が1480トンで、前年度までの増加からわずかながら減少に転じた。価格も低下。19年度はイノシシが1キロ約3700円、鹿が同約1900円で、いずれも前年度より3%程度下落した。
日本食肉消費総合センターのジビエ流通に関する報告書は、食用の販売価格低下はコロナ禍以前から「生じていた現象」と分析している。同報告書によると、食用の1施設1キロ当たり販売金額は、16年度を100とすると、イノシシは17年度が96・1、18年度が95・3、19年度が91・8と、毎年度下落。鹿の価格も同様である。17年度が90・6、18年度が88・8、19年度が86・6だった。
食用の販売価格低下の原因として報告書は、需要の開拓と掘り起こしができていなかったことを挙げ、食用での販売促進活動を促している。
コロナ禍で飲食店などの業務需要が減少し、いつ収束するかも見通せない。ペットフード用は売れ行きが好調だといっても、安価であまり利益を得られない。ジビエを地域振興に結び付けるには、家庭需要の拡大とそのための商品開発をはじめ、食用分野での販売促進活動が必要である。
農水省は、加工処理施設や猟友会、飲食店、市町村、JAなどで共同事業体を組織、ジビエの利用を拡大する取り組みや施設整備などを支援する事業を始めた。
食用の販売価格向上には、衛生管理など消費者に信頼される体制整備が当然の条件となる。鮮度・品質の確保も必要だ。その上で、狩猟者や処理施設だけではなく、流通や実需を含め、関係者挙げての販売促進活動が重要になる。
ジビエの価格下落 食用部門で積極販促を - 日本農業新聞
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