若者が集う東京・中目黒に「限界バーガー」という店が、3月末までの土日限定で出現した。少子高齢化が進む「限界集落」とは無縁の都心になぜ「ゲンカイ」なのか。足を運ぶと、その名にふさわしい商品が待ちうけていた。(山下葉月)
◆値段990円でも原価ギリギリ
東急東横線中目黒駅から歩いて約5分。製菓・カフェ・調理専門校「レコールバンタン東京校」の校舎に「GE N KA I BUR GER」と書かれた黄色い看板がかかっている。
「チーズバーガー」のお値段は990円だ。神戸牛、トリュフなど高級食材を使っているが「正直、ちょっと高い」。ぼやきながらメニューをあらためて眺めると「原価981円」との文字があった。価格の99%がコストとの表記に、にわかにお得感がわき上がった。通常なら3000円はするという。
早速かぶりついた。レンコンの食感と、赤ワインときのこで仕上げたソースが肉の味を引き立てる。「ミシュランガイド東京」で星を獲得している著名シェフ、鳥羽周作さんが監修しているのもうなずけた。品不足が話題のフライドポテトは110円、ソフトドリンクは100~150円とサイドメニューも激安だった。
なぜ「GENKAI」なのか。バンタンの広報担当者は「高級食材を使用し、限界ぎりぎりまで原価並みの価格にこだわったので名付けた。通常はまず難しい価格設定」と語った。
発端は新型コロナウイルス禍だった。生徒の多くは調理の勉強と収入確保を兼ねて飲食店でアルバイトをする。しかし、コロナ感染拡大に伴う営業規制や客離れの影響で多くがバイト先を失った。
◆バイト代わり経験の場
バイトに代わる経験の場を確保しようと、同校は1月下旬から3月下旬までの2カ月限定で、臨時店舗を校内に開くことを決定。調理しやすく、少しの工夫で味の変化を表現できるハンバーガーを主題に選んだ。
学びが目的のため利益はゼロ。学校施設のため光熱費や家賃もかからず、コストを「限界」まで抑えて安価を実現した。コロナ禍で忘れていた「満席の喜び」を体験してほしいとの思いも込められている。
奇抜な名前と本格派の味わいが会員制交流サイト(SNS)で広まり、店は連日にぎわう。会社員の関谷里菜さん(26)は「神戸牛のパティが肉肉しくておいしい。接客もていねいで満足です」と話した。
店で働く1年生の安原亜実さん(21)は「どのくらいの温度で料理を出せばいいのか。配膳のスピードもどのくらいが適当か。仕事をすることで分かることがある。収穫が大きい」と笑顔をみせる。
開店は3月27日まで。詳細は「GENKAIBURGER」で検索。
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