[東京 9日 ロイター] - 日銀の中村豊明審議委員は9日、山梨県金融経済懇談会(オンライン形式)であいさつし、企業の価格設定行動の積極化が日本経済の新たな成長軌道へのシフトと物価目標の実現に関わる重要な要素だと指摘した。その上で、2%の物価目標の実現に向けて、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくと語った。
中村委員は原材料高を受けた企業の価格転嫁について、上下双方の不確実性があると述べた。価格転嫁が十分進まなければ、企業業績が下押しされて「賃金と未来への投資が抑制される悪循環に陥りかねない」とする一方、「物価上昇に対する企業のセンチメントはこのところ高まっている」と述べ、「価格転嫁が想定以上に進む可能性もある」とした。
中国でのオミクロン株の感染拡大が、世界経済の下押しと、グローバルな供給制約や物価上昇圧力の長期化につながるリスクがあるとも述べた。
コロナ禍の政策対応や支出の手控えで、企業や家計の現預金は膨張している。中村委員は、家計の現預金残高は「感染拡大前のトレンド対比で44兆円増加している」と指摘。感染症の影響が徐々に和らいでいけば、ペントアップ需要が顕在化して経済活動の活発化につながることが期待されるとした。
一方、中小企業の設備投資計画が昨年12月の日銀短観では「やや弱めの動きになっている」と指摘。中小企業が投資を抑制して現預金を持ち続けるスタンスを強めると「長年の課題である生産性向上の実現が先送りになるので注意が必要だ」と述べた。
<資金循環の拡大ヘ、求められる「ダイナミズムの復活」>
日立製作所出身の中村委員は、現在の企業の課題であるデジタル化と気候変動対応について、原材料調達から商品・サービスの提供にかけての「バリューチェーン」全体で多くの企業を巻き込みながら、多額の国内投資を持続的に行う必要があると指摘した。
バリューチェーンの見直しが進む中で、成長する中小企業やスタートアップが出てくる「ダイナミズムの復活」により、「企業の過度な貯蓄マインドが変化し、設備、ソフトウェア、研究開発、人材、M&A(企業の合併・買収)などの投資がさらなる投資を呼ぶ形で資金循環が拡大し、新たな経済成長と持続的な賃金上昇の実現につながる」と語った。
こうした好循環の実現のために、特に「年功序列型賃金体系や内部昇進制度を含む長期雇用慣行を骨格とする日本型雇用システムと硬直的な労働市場は変革が必要だ」と訴えた。
(和田崇彦)
価格設定行動の積極化、物価目標実現への重要な要素=中村日銀委員 - ロイター (Reuters Japan)
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