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2021年に起こった世界的な木材価格の高騰「ウッドショック」の後を追うかのように、鋼材の価格が上昇している。調達のリードタイムが長引き、工場建設の見直しや公共施設の開業延期につながるなど建築プロジェクトにも影響が出始めた。鉄鉱石と石炭の価格高騰や世界的な供給体制の見直しが需給バランスを崩し、価格の先行きが見通せなくなっている。
事業化は一旦見合わせ、23年度以降に最終判断を延期する――。22年1月24日に建材大手の大建工業が発表した資料からは「不確定要素があまりにも多い」「延期せざるを得ない」などの悔しさがにじむ。
延期したのは新工場の建設だ。約70億円を投じて北海道旭川市に工場を新設し、24年度に国産材を使った自社開発の木質ボードを量産。これが実現すれば東南アジアからの輸入材に頼っていた合板を代替でき、壁や家具向けの板材の供給能力を底上げできるはずだった。
事業の見直しを迫った要因の1つが、鋼材の価格高騰だった。同社は詳細な内訳を明かしていないが、工場の建屋と生産ラインに用いる鋼材が急騰。総事業費は最終的に約120億円と当初の2倍近くに膨張した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う技術者の渡航制限なども重なり、計画を見直さざるを得なくなった。
鋼材価格はこの1年半で高騰している。建設物価調査会によると、東京のH形鋼価格(SS400、200×100mm)は20年下期の1トン当たり7万4000円から、21年に入ってほぼ毎月上昇。22年2月に10万9000円と47%高くなった。異形棒鋼(SD295、D16)も20年8月から22年2月にかけて50%値上がりした。
東北地方の鉄骨加工会社の営業担当者は「鋼材同士の溶接に使う線材も値上がりした。燃料代もかさんでいるため利益がほとんど出ない」と悲鳴を上げる。
鋼材調達の遅れもすでに生じている。宮城県南三陸町は隈研吾建築都市設計事務所が設計を担当した町立の震災伝承施設「南三陸311メモリアル」の開業時期を22年4月から22年10月に延期した。建設現場で鋼材の調達に想定よりも時間がかかったためとしている。
大手鋼材商社の担当者は「値上げが続いていることから、建設会社や鉄骨加工会社が安値で仕入れようとして注文を前倒ししている。そのため以前よりも納期が長くなっている」と語る。同担当者によると、20年10月にH形鋼の納期は長くても2カ月だったのが、21年10月には最大で3カ月半に延びた。鋼板から作る角型鋼管の納期は21年10月に最大で5カ月と、1年前の2倍の水準だ。
「国内で計画される大規模な半導体工場では、鉄骨造からRC造に切り替えざるを得ないとの話も出ているようだ。だが梁材(りょうざい)には鋼材を使わざるを得ないため、価格高騰の影響は免れないのではないか」(同担当者)
まさに異常事態。なぜ高騰しているのか。
鋼材高騰で異常事態 価格1.5倍、納期2倍で建築工事に遅れも - ITpro
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