あんかけスパゲティ、みそ煮込みうどん、食パン付きのモーニングセットなどの「名古屋めし」に値上げの波が押し寄せている。ふんだんに使う小麦粉などの原材料価格の上昇に歯止めがかからないためだ。飲食店はコスト削減や新たなメニューの提供など、対策に知恵を絞っている。(佐野寛貴)
愛知県で人気のあんかけスパ専門店「スパゲティハウス チャオ」は3月、ピーマンやウィンナーなどを使った定番メニュー「ミラカン」を40円高い970円(税込み)に値上げした。他のメニューやトッピングも10~50円上げた。
名古屋駅周辺を中心に複数の店舗を構え、ビジネスマン向けの手頃な価格が売りだが、麺の原料となる小麦粉や食用油、肉類などの調達価格の上昇で、従来の価格ではコストを吸収するのが難しくなった。
運営会社「モリタ」(名古屋市)の森田慶一社長は、「コロナ禍で前から厳しかった。仕入れ業者からは、すでに値上がりした食材がまた上がるとも聞いている」と頭を抱える。
他のチェーン店でも値上げが相次いでいる。
居酒屋「世界の山ちゃん」を展開するエスワイフードは4月4日から、東海3県などで看板商品の手羽先(5本)を528円から583円に約1割値上げした。
月100トン以上を使用する手羽先や食用油などの価格上昇によって年間1億円以上のコスト増を見込んでいる。
みそ煮込みうどんやモーニングなどを提供する「和食麺処サガミ」の運営会社サガミホールディングス(HD)は4月、一部メニューを20~30円ほど値上げした。
ラーメンチェーン「スガキヤ」を展開するスガキコシステムズも4月、看板商品のラーメンを330円から360円にした。
カレー専門店チェーンの壱番屋は6月からカレーやトッピングを値上げする。
値上げに踏み切った企業は、材料費高騰の影響の抑制に取り組んできた。
スガキコシステムズでは、昨年夏から一部店舗でチャーハン(360円)の販売を始めた。ラーメンとのセットなどで、ボリュームを求める男性客らを呼び込む狙いがある。
エスワイフードは、取引先との価格交渉や本部経費の削減、スケールメリットを生かした物流改革などでコスト増の吸収を図ってきた。
あんかけスパのモリタは3月には全てのチャオ店舗で注文用タブレット端末を導入した。利用者の回転率の向上や、スタッフの人件費の削減につなげている。2020年には食品の仕入れ体制を見直している。各店舗への直接配送から、会社の拠点で一括で受け取り、社内で配送する方式に切り替えた。
森田社長は「地元に支えられてきたメニュー。苦しい中でも、よりよいサービスと商品の提供を続けるしかない」と話している。
きしめんやモーニングのトースト、みそかつなど小麦粉を使ったメニューが多い「名古屋めし」は、小麦価格上昇の影響が特に大きい。
小麦は、9割が輸入品だ。日本政府はほぼ全量を買い付け、製粉業者などに売り渡している。価格は半年ごとに改定されるが、4月は約17%引き上げて1トンあたり平均7万円超と、過去2番目に高い水準に達した。
この値上がりは北米での天候不順による不作の影響が大きい。ロシアのウクライナ侵攻による最近の小麦価格の急上昇は一部しか織り込んでいない。両国は世界有数の穀倉地帯で、世界市場への影響は今後深刻化する恐れがある。
10月に改定される日本の輸入価格も、再度の大幅な引き上げが見込まれる。急速な円安傾向が続けば、輸入価格の高騰に拍車がかかる可能性もある。
原材料価格上昇の直撃受ける「名古屋めし」…値上げに踏み切った企業、対策に知恵絞る - 読売新聞オンライン
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