総務省の消費者物価指数(2020年=100)によると、食用油は4月に135まで急騰。小麦粉も114に上がった。どちらも原材料はほとんどが輸入だ。輸入牛肉も109に上がった。一方で国産牛肉は101にとどまり、他の国産農畜産物も米が93、牛乳は100。野菜はタマネギが195に対し、ニンジンは92。在庫や天候などによる需給に左右される。
価格が需給で決まるのは市場の基本である。とはいえ、資材高がここまで深刻化しても価格に反映できず、その傍らで、輸入農畜産物や加工食品が値上がりし、仕入れコストの上昇を価格に上乗せできている。理不尽というべき光景ではないか。
JAグループは、生産コストの転嫁など再生産可能な適切な価格形成の仕組みを構築するよう、政策提案で求めている。JA全中が13日に開いた食料・農業・地域政策推進全国大会では、「生産物に適正に価格転嫁できるルール作りと国民理解の醸成が必要だ」と訴える声が上がった。農業経営の持続性を確保できなければ、食料の安定供給はできない。そうした理解を、流通業者や消費者から取り付けていくことは欠かせない。
気がかりなのは、日本では、食料品価格が各国に比べて低く抑えられていることだ。世界中ほぼ同じ規格で売られているハンバーガーの価格を比較した「ビッグマック指数」によると、1月時点で日本は1個390円だが、米国は669円(1ドル=115円で換算)。円安が進んだ直近の為替レートでは740円程度と、価格差はさらに広がる。中国や韓国と比べても日本は安い。
食料品は安い方がいいという風潮が、日本では特に強い。小売業者のバイイング・パワー(購買力)が大きいという事情もある。同様の課題を抱えるフランスは、新農業・食品法を18年に公布。農業団体、流通・加工業者を交え、生産コストをベースにした価格形成を模索する。
欧州連合(EU)も、23年から始まる次期共通農業政策の目標に「フードチェーンにおける農業者の交渉力強化」「農業者の公正な所得確保」を掲げる。
「食料は安くて当然」という時代は変わりつつある。資材高騰への対策も含め、農畜産物を正当に評価する価格形成の在り方を、日本でも広く議論すべき時だ。
生産資材の高騰 価格転嫁の仕組み急務 - 日本農業新聞
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