電気自動車の最新価格動向
レガシー、スタートアップを問わず、ほとんどの自動車メーカーはプレミアムカーあるいはラグジュアリーカーを売り物に電気自動車市場への参入を果たしている。
GMCの『ハマーEV』は11万295ドル、キャデラック(Cadillac)初の電気自動車『リリック』は5万8795ドル。テスラ(Tesla)の『ロードスター』は10万9000ドルからで、『モデル3』は当初3万5000ドルと発表されていたが、現在の販売価格は4万8490ドルとなっている。
一方、スタートアップのリビアン(Rivian)が2021年9月に生産開始したデビューモデル、電動ピックアップトラックの『R1T』は6万7500ドルからで、ルーシッドのフラッグシップセダン『エア・ドリームエディション』は16万9000ドル。
なお、ルーシッドの『エア・ピュアエディション』はほぼ半額の8万7400ドルとなる見通し(2022年6月1日以降、予約価格を変更)。
「16万9000ドルの電気自動車をつくれる自動車メーカーはたくさんあります。しかし、アメリカの安全基準をクリアし、アメリカ市場で最小限の需要を満たす2万5000ドルの電気自動車をつくれるメーカーはいまのところ存在しません」
ただし、ごく最近について言えば、電気自動車の販売価格は低下に向かう兆候もある。
フォルクスワーゲン(VW)のデビューモデル『ID.4(アイディフォー)』は4万1995ドル。フォードの電動ピックアップトラック『F-150ライトニング』は標準モデルで3万9974ドルから。シボレー『ボルトEV』の2022年モデルは3万1500ドルから、日産『リーフ』は2万7400ドルから。
イーロン・マスクは最近、2万5000ドルの電気自動車はテスラにとってもはや優先事項ではないと発言しているが、(テスラ出身で)ルーシッドCEOのピーター・ローリンソンは現在もなお同社にとって最重要のテーマとしており、そのスタンスは対照的だ。
価格低下に向けた「3つの解決策」
シンガポールに本拠を置くリチウム電池メーカーSESのキーチャオ・フー(胡后朝)CEOは、「(近い将来について言えば)自動車メーカーが狙い通りに電気自動車のコストを下げ続けるのは不可能だと思います」と断言する。
一方、米コンサル会社ウェスト・モンローのイノベーション・フェロー、アンドリュー・ディロンは、車載電池の供給不足問題がEV普及を遅らせる可能性こそ認めるものの、電気自動車の低廉化を進める自動車メーカーの能力にまで影響を与えるとは考えられないと指摘する。
また、商用化に向けて開発が進められている固体電池技術は、原料となる金属の供給不足と価格上昇に苦しむ自動車メーカーにとって救いの船になるという。
ディロンは、フォルクスワーゲンが国際モーターショー「IAAモビリティ2021」(2021年9月)で発表したコンセプトカー『ID.LIFE(アイディーライフ)』に触れつつ、次のように語る。
「フォルクスワーゲンが約束した2万5000ドルの電気自動車(ID.LIFE)は実現する可能性がきわめて高いと考えています。
固体電池にはさらなるコストダウンの余地があり、それも含めて電池の低価格化にはいまのところ終わりが見えません。それは電気自動車の低廉化にとって最大の原動力となるでしょう」
SESのフーCEO(前出)は電気自動車の価格引き下げにつながるソリューションを3つ提示する。
- 電気自動車向け電池サプライチェーンの地元(地産)化
- 電池リサイクルの浸透
- バッテリー・アズ・ア・サービス(=電気自動車の所有者が電池を保有せず、交換ステーションで充電済み電池をレンタルする仕組み)による消費者へのコスト転嫁
「バッテリー・アズ・サービスは原材料価格の上昇をエンドユーザーに転嫁するものです。電気自動車の所有者視点で見れば、トータルコストが時間の経過とともに増えていくことになりますが、電池部分がリースになるので初期費用をかなり安く抑えられます」
いずれにしても、ガソリン車から電気自動車に乗り換えることで追加費用が発生するようでは、消費者は二の足を踏むだろう。
「本当の危機(編集部注:電気自動車の需要と供給のミスマッチ)が数年後にやって来るのではないかと懸念しています。ほとんどの消費者はまだ、それぞれのニーズと予算に見合った高い費用対効果を得られる選択肢を手にできていないのですから」
(翻訳・編集:川村力)
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