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Saturday, July 16, 2022

仕切り価格とは?小売価格や卸売り価格との違いなどと併せて解説 - リテールガイド

一般に「価格」と言えば、消費者が商品を小売店から購入するときの代金を指す。しかし、流通業界では、「小売価格」「卸売り価格」「仕切り価格」というように、価格に関する専門用語が複数ある。「価格だから、モノの値段であることはわかるけど、どこが、どう違うの?」と、混乱している人もいるだろう。とりわけ、「仕切り価格」には、馴染みがない人も多いだろう。そこで、流通業界における 価格 について、整理してみることにしよう。

価格の名称は、流通の各段階で変わってくる。まず商品の流通ルートについて、確認しておこう。

商品は、一般に「生産者(メーカー)→ 卸売業者 →小売業者」という流通経路をたどって消費者に届けられる。商品によっては、鮮魚のように一次卸→ 二次卸と、複数の卸売業者が介在するケースもある。

一方で、生産者が卸売業者を介さずに小売業者に販売するケースもあるし、中には、生産者が直接、消費者に商品を販売することもある。

一般的な流通ルートでは、まず卸売業者がメーカーから商品を買い入れ、その商品を小売業者に販売する(「卸す」と言う)。卸売業者はその際、人件費などのコストや利益を含めたマージンを価格に上乗せする。小売業者は、卸売業者から買い入れた価格に、さらにマージンを上乗せして、消費者に商品を販売している。

つまり、商品が卸売業者、小売業者と、流通ルートを経るに従って、価格は上がっていくわけだ。

もうおわかりのように、小売業者が消費者に商品を販売する価格が「小売価格」だ。消費者から見れば、商品の値段、すなわち、「価格」ということになる。それに対して、卸売業者が小売業者に商品を販売するときの価格が「卸売り価格」、そして、メーカーが卸売業者に商品を販売するときの価格が「仕切り価格」と、一般に呼ばれている。卸売り価格も、仕切り価格も、BtoB(企業間取引)でしか使われない専門用語とも言える。

ちなみに、証券業界では、株などの取引のとき、証券会社の手数料込みの売買価格を、仕切り価格と称することがある。不動産取引でも、売り主と買い主の交渉が成立した場合の不動産価格を、仕切り価格と言うことがある。また、国産車の場合、一般に卸売業者が介在しないが、自動車メーカーがカーディーラー(小売業者)に車を販売するときの価格を、 “仕切り価格 ”と呼んでいるという。

このように、商品の種類によって、 “仕切り価格”の意味合いが変わってく
ることもあるので、注意しよう。

そのほかにも、流通業界では、価格に関する専門用語があるので、見ていこう。
例えば、「仕入れ価格」や「仕入れ値」は同じ意味なのだが、流通業界では幅広く通用している。

商品を卸売業者が生産者から買う場合にも、小売業者が卸売業者から買う場合にも、同じく商品を 仕入れた価格 という意味で使われるからだ。つまり、仕入れ価格とは、BtoBで、買い手が使う価格の名称だと、言い変えることもできる。

ただし、仕入れ価格は、商品本体の価格に別途、配送料などオプションの諸経費を加えたトータルの対価 として算定するケースが一般的だが、仕切り価格や卸売り価格の場合、取引交渉での 商品本体のみの価格 を指すケースも多いので、売買契約時に注意が必要だ。

仕入れ価格と似ているものとして、「原価」という専門用語もある。仕入れ価格と、ほぼ同義に使われるケースも少なくない。もともと商品を生産するときにかかる材料費や工場の燃料費、労務費などのトータルコストのことだったが(メーカーでは製造原価と言う)、「売上げ原価」とも言うように、小売業者が卸売業者から商品を仕入れるときの価格も、指すようになった。

なお、販売価格から原価を差し引いたのが、「粗利益(売上げ総利益)」である。仕入れ価格に似た専門用語としては、「下代」もある。もともとは、商人同士が使っていた「符丁」で、消費者に販売するときの小売価格を「上代」、それに対して、商品の仕入れ価格を下代と呼び習わしていたのだ。現在でも、流通業界で使われることがあるので、覚えておくといいだろう。ちなみに、ファッション業界では、値引き前の小売価格(プロパー価格)をよく、 上代 と言っている。それから、仕切り価格や卸売り価格、仕入れ価格を、「掛け率」で表す方法も広く使われてきた。掛け率とは、商品の小売価格を100%とした場合、それに対する、仕切り価格などの比率を指す。例えば、小売価格が1000円の商品は、仕入れ価格が650円だった場合、掛け率は65%ということになる。

商品の種類によって、掛け率はさまざまだが、例えば、加工食品の場合、卸売り価格の掛け率は70%前後、仕切り価格の掛け率は60%前後になるケースが多いようだ(ただし、あくまでも平均値。個別の商品や企業の取引関係によって変動する。以下、同じ)。つまり、卸売業者の取り分は卸売り価格と仕切り価格の差、10%前後ということになるわけだ(上場企業の決算書を見ると、原価や掛け率の全体像が把握できる)。

アパレル(既製服)の場合、仕入れ価格の掛け率は50~60%が標準と言われている。日本のアパレル会社は、多くがメーカーと卸売業者の機能を併せ持つことから、小売業者と直接取引するのが一般化しているが、アパレル会社が小売店に販売を委託したり、小売店の売場を借りて商品を販売したりするケースもあるので、それによって掛け率もかなり変動する。

ただし、掛け率は、小売価格が決まっていないと算定できない。だが現在、書籍などの一部のカテゴリーを除いて、メーカーが小売業者などに定価(再販売価格)を守らせることは、独占禁止法で原則、禁じられている(そこで、メーカーは「希望小売価格」「参考小売価格」などを使う)。

そのため、掛け率は、あくまでも、取引交渉やコスト構造を考えるときの参考数
値として、位置づけるといいだろう。また、メーカーは、小売業者などの取引先に、自社製品の拡販をプッシュするため、「奨励金」などの名目で、仕入れ実績に応じたキャッシュバック(いわゆるリベート)を実施するケースがある。つまり、仕切り価格の実質的な割引だ。そうなると、実質上の仕入れ価格や掛け率も変わってきてしまうので、リベートの有無もチェックしておこう。

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