東京都内の中古マンション価格は上昇が続いていると言われています。しかし、業界関係者の間では「この1年間で地域によって価格動向にわずかながら変化の兆しが見られる」との声も聞こえてきます。そこで都内を3つの地域に分け、それぞれの中古マンション価格の推移について調べてみました。
「価格指数」で比較
調査では都内を、東京23区のうち千代田・港・中央の「都心3区」、残る20区の「都区部(都心3区を除く)」、23区以外の26市などの「都区部以外」の3つに分けます。東日本不動産流通機構に登録されている2018年1月以降の中古マンション成約データを利用し、築年数や所在階といった物件属性で品質調整をしたうえで、地域ごとに各月の「価格指数」を作成しました。
価格指数は19年1月を1.0として算出しています。中古マンション価格には季節要因がありますので、直近12カ月間の平均値(12カ月移動平均)を採用しています。なお、調査対象を一般的なファミリーマンションに限定するため、専有面積を50~100平方メートルとしています。
2021年以降、価格上昇基調が強まる
グラフの通り、3地域とも19年から20年末にかけて緩やかな上昇傾向となっていましたが、21年1月以降は上昇基調が強まっています。20年初から21年5月にかけて都内の中古マンションの在庫件数が大きく減少したにもかかわらず、需要が変わらなかったことがその原因ではないかと言われています。
中でも都区部以外は22年3月以降に着目すると上昇角度が急になる月が目立っており、都区部(都心3区を除く)との差が小さくなっているように見えます。この動きの詳細を確かめるために、直近1年間の変化を詳しくみてみましょう。
都区部以外の価格上昇が顕著に
下のグラフは、21年7月時点を1.0として算出したグラフです。
22年1月まではどの地域もおおむね同じような価格上昇を見せていますが、22年2月以降は様相が違っています。都区部以外の価格上昇基調が他の2つの地域よりも顕著になっているのです。この傾向について業界関係者と話をしてみると「今後の金利上昇や景気動向に対する不安感から、無理をして都区部にある価格帯の高い物件を購入しようとする人が減ってきているのではないか」といった意見が聞かれます。価格帯の高い物件が多い都心3区で今年5月以降、価格上昇の勢いが落ちているのもそうした背景があるのかもしれません。
一方で比較的価格帯が低い都区部以外の物件は需要が高まった結果、価格上昇が顕著になった可能性があります。こうした傾向に対して業界関係者が感じていることは、「東京都の中古マンション価格トレンドに変調が起こる前兆ではないか」ということです。
秋以降の状況、注視が必要
都区部以外の中古マンションの価格上昇基調がより強まった理由が「購入者の将来に対する不安」ならば、今後の動向は購入心理に影響を与える金利動向や景況感がどのように変化するかがポイントになるでしょう。仮に金利上昇や景況感悪化が進んで購入者の不安感が強まれば高価格帯の物件の購入が一段と減り、価格上昇基調が変わる可能性があるかもしれません。ただ、在庫件数は22年3月にピークをつけ再び減少傾向にありますので、価格上昇を支える材料になる可能性もあります。いずれにせよ、今後の中古価格の動向を探るには今秋以降の状況を注視していく必要がありそうです。
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。
東京都内の中古マンション価格、上昇基調に変化の兆し - 日本経済新聞
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