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Sunday, August 7, 2022

レモネードは「エリートの飲み物」? インドではレモンの価格が高騰し、結婚祝いとして贈られることも - Business Insider Japan

レモン

市場で売られているレモン。

Abhishek Anupam for Insider

  • 記録的な暑さに見舞われているインドではこの夏、レモンの価格が高騰している。
  • そのせいで、レモンが大量に盗まれたり結婚祝いとして贈られることもあるという。
  • 価格は一時より落ち着いたものの、価格が高騰したことで人々の食生活やビジネスにも変化が見られた。

インドのムンバイでレモネードの屋台を営む、レモネード販売歴12年のチャンドラシェーカル・バラーブライ・ディベンダーさんは「レモンの価格がこれほど高いのは見たことがない」と言う。

冬のいつになく多かった雨と夏の暑さの影響で収穫量が少なかったこと、世界的なガソリン価格の高騰で輸送費が上がったことで、インドでは4月から6月にかけて、レモンの価格が高騰した

レモンはインド料理にはなくてはならないものだ。ところが今年の夏はレモンが"高級食材"になってしまい、その影響でレモンが大量に盗まれたり結婚祝いとして贈られることもあった。なんてことのないレモネードがエリートの飲み物になった。

ムンバイでレモンやレモネードを売っている業者らは、2021年はレモン5~7個を10ルピー(約17円)で仕入れることができたと話している。ところがここ数カ月は、10ルピーで1つ手に入れるのもやっとだという。

ディベンダーさんは、2021年には1日に1500ルピーほど稼いでいたものの、今ではその収入は半分になったと話している。

減った収入を補うために、ディベンダーさんはバターミルクと紅茶を売る屋台も始めた。そのため、「今年は儲けを出し、貯金することはできない」という。

ムンバイでレモンを販売しているサンジャイ・ソナワネさんは、例年の夏なら1日に7~10キロのレモンを売っていたという。

「今年の夏は1日に5キロ売るのにも苦戦しています。大半のお客さんは値段を聞いて、去ってしまうんです」

何とか生活していくために、ソナワネさんはローンを組まなければならず、「まだ返済できていない」と話している。ソナワネさんにとって、借金は常に"最後の手段"だ。

異常な季節

農業経済学者のアランクリタ・ゴスワミ氏は、レモンの価格高騰には複数の要因があると話している。冬の降雨量が多かったことで一部地域でレモンの生産が数カ月遅れ、「2022年初めの異常な気温の高さ」によってレモンの生産量が減り、質も低下した。

売店

Abhishek Anupam for Insider

インドの農産物市場委員会によると、今年の夏のレモンの入荷は例年のわずか5%だという。

「その一方で、燃料やガソリン価格も高騰しました。それが輸送コストにも影響しています」とゴスワミさんは話している。

インド人のレモン愛

「レモンとインド料理には長い歴史があります」と語るのは、デリーを拠点に活動しているフードブロガーのチャイタリ・アガワルさんだ。

「わたしたちの祖母世代は昔からレモンやレモンのピクルスを瓶詰めにしていて、この柑橘類の女神で食事を終わりにするんです」とアガワルさんは話した。レモンにはビタミンCが豊富に含まれているという。

「わたしは毎食、サラダを食べるのが好きなんですが、絞りたてのレモン汁を使ったドレッシングが欠かせません」

夏の暑さは自家製レモネードやレモン入りのアイスティー、レモンの香りを付けた水の需要を急増させていて、これらは全て「大量のレモン汁」を必要とすると、アガワルさんは話している。

また、レモンが厄除けになると信じている人たちもいる。家の外や車に唐辛子と一緒にレモンを置いている人もしばしば見られる。

レモン

Abhishek Anupam for Insider

レモンの価格高騰を受け、これまで大量にレモンを購入していたアガワルさんの友人や家族は、レモンの購入量や使用を減らしているという。

「生活に根付いた、ありふれた農産物がものすごい高級品になってしまいました」とアガワルさんは語った。

波及効果

価格高騰はインドでのレモンの使われ方を変え、栄養レベルやビジネスにも影響を及ぼしている。

ムンバイの一部地域ではこの夏、レストランやバーでこれまでオニオンスライスやサラダに添えられていたレモンが提供されなくなった。

「去年までは、パオパジやマッシュポテトのカレーにレモンを1個、半分に切って添えていました」とムンバイで屋台を出しているサヴィタ・バレラオさんは話している。

「今は1日にレモンを5個仕入れて、1個を4つにカットしています」

レモンの価格がピークに達した4月には、バレラオさんはレモンの提供を一切やめた。

「お客さんにはレモンはもう振りかけてあると伝えて、舌にピリッとする風味を加えるために少量のお酢を使っていました」とバレラオさんは語った。

レモンの代わりにお酢を使う傾向は、自宅で料理を作る人の間でも見られたとアガワルさんは言う。

「もちろん絞りたてのレモン汁とは全く違いますし、新鮮なレモンにある健康上の良い効果もありません」

脅かされる生活様式

レモンはインドそして世界の食料危機のごく一部に過ぎない。燃料価格の高騰やサプライチェーンの問題で、インドではさまざまな食品が値上がりしている。

インドの統計・事業実施省は、2月から4月にかけて食品価格が平均で7.3%上がったと報告している。消費者物価指数も4月には7.8%に達し、5月はやや下がって約7%だった。

チャート

インドのインフレ率。

「差し迫った食料危機は、今もそこにあります。今や食は喜びの源であり、生活の一部です。食料危機はその全てを脅かしています」とアガワルさんは言う。

6月から9月にかけての雨季に入って、レモンの価格も落ち着き始めている。インドでは年に3回レモンのシーズンがあり、新たな収穫サイクルが始まったことも影響している。

ただ、レモンの価格は10~12月まで平常に戻ることはないだろうとゴスワミさんは見ている。

価格が落ち着いてくれば消費者はひと息つけるかもしれないが、レモン関連のビジネスは元には戻らないかもしれない。

ディベンダーさんは今、自分の子どもたちに家族でやってきたレモネードのビジネスを継いでもらいたくないと考えている。

「子どもたちには伝統を破って、学校を出て、安定した収入源を得てもらいたいと思っています」とディベンダーさんは言う。

「子どもたちには自分が経験したようなことを経験してほしくないんです」

[原文:Lemon prices soared so much in India this summer they were given as wedding gifts and lemonade was seen as an 'elite' drink

(翻訳、編集:山口佳美)

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