日銀が発表した短観=企業短期経済観測調査で、大企業の製造業の景気判断を示す指数は、3期連続で悪化しました。9月に東京の信用金庫が行った聞き取り調査を中心に、企業は原材料価格の高騰や急速に進んだ円安でどのような影響を受けどう対策しているのか取材しました。
聞き取り調査「価格転嫁できない」84%「円安が影響」半分超
東京 品川区に本店を置く城南信用金庫は、取引先の中小企業670社を対象に原材料価格の高騰や急速に進んだ円安が経営にどのような影響を及ぼしているか9月、職員が取引先を直接訪ねて聞き取りました。
また、品川区にある鋼材の卸売り会社の社長は、「商品はすべて輸入品なので、円安で価格が上がり、ほかにも電気代やガソリン代なども増えている。価格転嫁をしなければならないが、取引先も状況は理解しているものの、なかなかすべて認めてくれないのが現状だ」と厳しい現状を説明していました。
また、急激な円安が会社の収益にどの程度の影響を及ぼしているか尋ねたところ、「深刻な悪影響がある」が10.8%、「やや悪影響がある」が42.8%となり、「悪影響がある」と答えた企業が全体の半分を超えました。
城南信用金庫の川本恭治理事長は「新型コロナの感染が落ち着いて、企業の売り上げは回復傾向にあるが、原材料の高騰分を価格転嫁できず、利益が確保できていないところが多い。つなぎの融資で解決できる問題ではないので、原材料を安く手に入る仕入れ先を紹介するなど対策を講じている」と話していました。
円安は新興国通貨にも コストアップの要因に
三重県桑名市に本社がある食品メーカーでは、2000年からレトルトのカレーなどをタイの子会社で生産し、輸入して日本国内で販売しています。
また、このメーカーでは現地の子会社が製造した商品をタイの通貨「バーツ」で購入し、輸入しています。去年9月には1バーツ=およそ3.3円でしたが、9月は1バーツ=3.8円を超えるまで円安が進み、コストアップの要因になっているということです。
メーカーでは、ことし8月1日にカレーなどの値上げに踏み切りましたが、品質を保ちながら価格を抑えるため、原材料の見直しを検討したり、商品パッケージを2ミリ薄くして海上輸送の効率を上げたりするなど工夫を重ねています。
食品メーカー「ヤマモリ」の三林圭介社長は「値上げをすれば売れなくなるリスクもあるので、企業努力をして消費者に納得してもらえる値上げを追求していく」と話していました。
逆境だからこそ… 社員のやる気高める月3万円の“物価高手当”
長野県千曲市で浄水器や健康関連の商品などに使われる機能性の高いセラミックス製品を開発している従業員15人のメーカーでも物価高の影響に悩まされています
商品に欠かせない天然の鉱石など、素材のおよそ30%を輸入しているため、記録的な円安のあおりを受けて仕入れ価格がコロナ前の2019年と比べて20%近く上がっています。また、エネルギー価格の上昇に伴って製造するための炉の光熱費や営業で使う車の燃料代の負担も重くなっています。
厳しい状況にあっても逆風に立ち向かおうと考えた会社は、社員のやる気につなげようとことし7月から物価高に苦しむ社員の家計を支える月3万円の“物価高手当”を支給しています。
社員は、「生活のゆとりは気持ちの余裕につながり仕事に打ち込める。会社が苦しい中でも手当てを支給してくれるので、今度は社員が利益を上げて貢献していく番だ」と話していました。
長野セラミックスの佐藤義雄 社長は、「苦境の中で、月3万円の手当ては大金だが、今こそ“全員野球”で新商品を開発し市場に送り出す必要がある」と話しています。
8割「価格転嫁できず」 信金の聞き取り調査からは… 日銀短観 - nhk.or.jp
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