新築マンションの価格上昇が止まらない。不動産経済研究所(東京・新宿)が18日発表した2023年3月の新築マンション価格は東京23区は前年同月比2.7倍の2億1750万円、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)は同2.2倍の1億4360万円とそれぞれ初めて2億円、1億円の大台を超えた。
2022年度を通じた平均価格も、23区で前の年度に比べ17.2%増の9899万円と、年度として遡れる1990年度以降で過去最高を更新した。低金利で富裕層を中心に需要は強く、用地取得費などの上昇分を価格に反映しやすい状況が続く。中間層にとっては手の届きにくい価格帯に突入している。
3月は都心で大型・高額物件が出た結果、全体を押し上げた。最低価格が2億3000万円台からの「三田ガーデンヒルズ」(東京・港)が寄与したとみられる。売れ行きも「予想を上回り、多くの反響があった」(三井不動産)という。
同マンションの影響を除いても都心部のマンションの価格上昇傾向は続いており、販売も好調だ。「医者や経営者、上場企業に勤める夫婦世帯など世帯年収が2000万円以上ある人たちがメインの購入層になっている」(リクルートのSUUMO新築マンション編集長の柿崎隆氏)。3月に分譲を始めた野村不動産の「プラウドタワー平井」(東京・江戸川)も都心部から外れているが、中心価格帯が8700万円と、都内の新築物件は中間層の手が届きにくい価格帯になっている。
マンション価格が高騰しているのは供給コストが上昇しているからだ。「用地取得コストや建築価格、仕入れの難しさによる今後の供給不足などに加え、一部でアジア圏を中心とした富裕層のマネーの流入も影響しているようだ」(ケネディクスの佐藤啓介執行役員経営戦略部⻑)
マンション価格が高騰しても富裕層の需要があることもあり、デベロッパー各社の経営環境はよく、値下げして売り急ぐ必要がない。実際、発売戸数抑制の傾向も表れている。22年度の首都圏の新築マンションの発売戸数は2万8632戸と、2年ぶりに3万戸を下回った。最も供給が多かった2000年度の3分の1程度の水準だ。
不動産助言会社トータルブレインの杉原禎之副社長は「首都圏の大型物件は00年代前半は1年以内だった平均完売日数が足元では2年以上に延びている」と説明。「好立地にある高額物件を一度にまとめて売らず、期間を分けて売り切ることで長期で安定した収益の確保につなげている」と指摘する。
経済調査会によると東京都の3月の建設資材価格指数(建築)は157.1(15年度=100)で、2年前から約4割上昇。資材価格の高騰が販売価格に本格的に転嫁されるのはこれからとされ、東京カンテイの高橋雅之主任研究員は「23年度もマンション価格は1割ほどあがるのではないか」と当面はこの流れが続くと予測する。
郊外では割安な戸建てに客層が流れてしまい、売れ残りが生じる懸念も出てきた。「相場が6000万円程度にもかかわらず70平方メートルで8000万〜1億円と強気で売り出した結果、買い手がつかず苦戦するケースがある」(高橋氏)
中古マンションにも新築を買うのを断念した層が流れている。ただ、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、東京都区部の中古マンションの1平方メートルあたりの成約価格は3月で前年同月比3.7%増の100万6800円まで上昇。3月まで成約件数は2カ月連続前年同月を上回ってはいるものの、価格上昇に伴って在庫も増えている。
(山口和輝、橋本剛志)
【関連記事】
マンション価格、23区は初の2億台・首都圏1億台 3月 - 日本経済新聞
Read More
No comments:
Post a Comment