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Sunday, August 6, 2023

【特集】 Wi-Fi中継機の効果は価格で変わる?松竹梅の3グレードで比較!実はケチらないほうがいいかも - PC Watch

松・竹・梅の価格や性能が異なる3つのグレードのWi-Fi中継機を比較した

 Wi-Fiの電波を中継し、通信可能なエリアを広げることができるWi-Fi中継機。しかし中継器と一口に言っても、ハイエンドからローエンドまで性能の異なるグレードが販売されていることを知っているだろうか。

 現状の住まいのWi-Fi環境を改善したい! そういった目的のために導入されるWi-Fi中継機だけに、それぞれの性能の違いがどの程度影響を与えるのか、知りたいと思う人は多いだろう。

 今回は、松竹梅の3つのランクのWi-Fi中継器を用意。実際に使い比べて、どこが違うのか、性能に違いは出るのかを確認してみた。

中継機も高性能化の時代へ

 今のネットワーク環境に追加するだけで、手軽にWi-Fiの通信エリアを拡大できるWi-Fi中継機のラインナップが増えてきている。

 どちらかというと従来は、小型の廉価版Wi-Fiアクセスポイントというイメージだったが、現在は中継機としてのデザインや機能が追求された製品が多い。メッシュ対応製品や高性能な親機と同等の4,804Mbps対応機、Wi-Fi 6E対応のトライバンド機なども増えてきている。

 これまでの「電波が届かない場所に電波を届ける」という目的から、電波が届くだけでなく、より快適に使える高い通信速度を実現したり、より簡単に接続できるようにしたりと、快適性が求められるようになってきた影響だろう。

 このため、Wi-Fi中継機をいざ買おうとすると、どれを買えばよいのか悩ましい状況となりつつある。

 現状販売されているWi-Fi中継器の価格帯としては、3,000円~1万5,000円以上といったところで、ざっくり分類すると以下の表のようになる。

Wi-Fi中継器の価格帯
価格 グレード
3千円前後 Wi-Fi 5対応の廉価モデル
6千円前後 Wi-Fi 6対応の普及モデル(1,201Mbps)
1万円前後 Wi-Fi 6対応の高速モデル(2,402Mbps以上)
1万5千円以上 Wi-Fi 6E対応のトライバンドモデル

 ほとんどのケースでは、7,000円前後のWi-Fi 6普及モデルが購入候補になるかと思われるが、価格を下げることでデメリットが生じたり、逆に価格を上げることでメリットが生まれたりする場合もある。そのため、ランクによって具体的な違いがどこにあるのかを、今回の検証結果で確認しておくといいだろう。

スペックを比べて分かる松竹梅の違い

 まずは、スペックを比べてみよう。以下が、上記3製品のスペックだ。

中継機スペック
【松】WEX-5400AX6 【竹】WEX-1800AX4 【梅】WEX-1166DHP3 ※比較用ルーター
WSR-5400AX6シリーズ
実売価格 13,500円前後 7,000円前後 6,500円前後 -
対応規格 Wi-Fi 6 Wi-Fi 6 Wi-Fi 5 Wi-Fi 6
バンド数 2 2 2 2
160MHz対応 × ×
最大速度 2.4GHz:573Mbps
5GHz: 4,803Mbps
6GHz:-
2.4GHz:573Mbps
5GHz:1,201Mbps
6GHz:-
2.4GHz:300Mbps
5GHz:866Mbps
6GHz:-
2.4GHz:573Mbps
5GHz:4,803Mbps
6GHz:-
チャネル 2.4GHz:1-13ch
5GHz:W52/W53/W56
6GHz:-
2.4GHz:1-13ch
5GHz:W52/W53/W56
6GHz:-
2.4GHz:1-13ch
5GHz:W52/W53/W56
6GHz:-
2.4GHz:1-13ch
5GHz:W52/W53/W56
6GHz:-
ストリーム数 2.4GHz:2
5GHz: 4
6GHz:-
2.4GHz:2
5GHz:2
6GHz:-
2.4GHz:2
5GHz:2
6GHz:-
2.4GHz:2
5GHz:4
6GHz:-
アンテナ 内蔵 内蔵 外付け2本 内蔵(4+2本)
WPA3 ×
メッシュ EasyMesh EasyMesh - EasyMesh
LAN 1Gbps×5 1Gbps×1 1Gbps×1 1Gbps×5
(1基はWAN)
ファーム自動更新
サイズ 59×177×175mm 85×141×33mm 160×80×28mm 59×177×175mm

 最初に注目したいのは、やはり速度だ。松のWEX-5400AX6は、通常の倍となる160MHz幅での通信にも対応しており、最大4本のアンテナを使って通信する4ストリーム対応で、最大4,803Mbpsに対応している。

 現状、PCやスマートフォンのWi-Fi 6の速度は最大2,401Mbps(2ストリーム/160MHz幅)となるため、4,803Mbpsの場合、2系統分の帯域を持っていることになり、「親機-中継機-子機」のように中継機が親機と子機の両方と通信しなければならないケースでも、実効速度を低下させることなくデータを中継できる。

 このほか、WEX-5400AX6は、本体サイズの大きさを生かして、有線LANが5ポート搭載されているのも魅力的。リビングなどに設置して利用する場合、TVやレコーダ、ゲーム機、PCなど、複数の機器を接続して無線化できる。

 一方で、竹のWEX-1800EX4は、同じWi-Fi 6でも最大速度が1,201Mbps(2ストリーム/80MHz幅)となるため、中継時に中間で帯域が不足するケースがある。電波が届くエリアは広げることができるが、実効速度としては若干落ちることになる。

 梅のWEX-1166DHP3は、Wi-Fiの世代が1つ古いWi-Fi 5のため、速度はさらに866Mbpsと低くなる。こちらも電波が届くエリアを拡大することは問題ないが、つながった後の実効速度を考えると、控えめになりがちだ。

EasyMeshとは?

 なお、松のWEX-5400AX6と竹のWEX-1800AX4は、いずれもEasyMeshに対応している。EasyMeshは、Wi-Fi Allianceが定めた中継機の相互接続規格で、異なるメーカーの製品との接続が可能になるだけでなく、既存のWi-Fi環境に簡単な操作で中継機を追加できるようになっている。

EasyMeshに対応。有線ケーブルの接続だけで簡単にペアにできる

 具体的には、初期設定時にEasyMesh対応の親機(基本的には同じバッファローのWi-Fi 6対応モデル)と有線LANで接続し、数分待つだけでいい。これで親機と中継機とのペアリングが完了し、現在の親機のWi-Fi設定も継承される。難しい設定をしなくても、中継機を増設できるメリットは大きい。

戸建てとマンションの2種類の住居でテスト

 それでは、気になる性能を比較してみよう。先ほどの表にある通り、今回は同じバッファローのWi-Fi 6対応ルーター「WSR-5400AX6シリーズ」を利用した。最大4,803Mbps対応のルーターなので、この速度を中継機が生かせるかどうかがパフォーマンスの分かれ目になる。

 テストではiPerf3を使用。ルーターにLANケーブルでつないだ1台のPCをサーバー側に設定し、別に用意したノートPCからサーバー側に向かって以下のようなコマンドを送り、上りと下りの速度を計測するという感じだ。

./iperf3 -c 192.168.1.140 -t10 -i1 -P5
./iperf3 -c 192.168.1.140 -t10 -i1 -P5 -R

3階建ての戸建て住宅でテスト

戸建て住宅のテスト環境

 このテストでは、3階建ての木造戸建て住宅の1階にルーターのWSR-5400AX6シリーズを設置。中継機は3階の階段近くのコンセントに接続した。1階のWSR-5400AX6シリーズと、中継機は、らせん状になってはいるものの階段を通じて、ほぼ真上に位置しており、間に障害物が少ない場所を選んで設置している。

 この状況で、1階、2階、3階入り口付近、3階窓際(もっとも遠い場所)の4カ所でiPerf3による速度を計測している。

 まず、この環境はさほど広くないうえ、電波が通りやすい木造住宅のため、単体でもかなり高性能な結果が出ている。単体であっても3階のもっとも遠い場所で下り273Mbpsなので、通常は中継機がなくても十分な性能となっている。

 また、2階までは、PCからの接続先が1階のルーターとなるため、どの機種を利用したケースでもほとんど差がない。注目してほしいのは3階以上、中継機経由で通信した場合の値となる。

 【松】WEX-5400AX6を利用した場合は、期待通りの性能が表れている。最も遠い3階窓際でも400Mbpsクラスの速度が出ており、中継機によって電波が届くだけでなく、高速化もしっかりと実現できている。中継機を3階の階段に設置している関係で、3階はどの場所に移動しても、平均して400Mbpsで通信できる状況だ。

 【竹】WEX-1800AX4は、電波が届くという点では、【松】WEX-5400AX6同様優秀だ。3階でもPCに表示されるWi-Fiのアンテナの感度は高く、つながらない場所はない。ただし、実効速度という点では物足りない。

 3階窓際の値は下りで181Mbpsと、親機単体の273Mbpsよりも遅くなってしまっている。これは、【竹】WEX-1800AX4の最大速度が1,201Mbpsまでとなる点が影響している。PCが2,402Mbpsではなく、1,201Mbpsで接続されるため、中継機と親機との間も1,201Mbpsで接続される。

 親機の性能が高い場合、このように中継機のスペックが低くなると、その経路がボトルネックになり、実効速度が下がってしまう。

 もちろん、電波が届く範囲は拡大されるため、環境によっては、単体時よりも接続できる場所は多くなるが、実効速度という意味では少々もったいない印象だ。

 最後の【梅】WEX-1166DHP3は速度的にはもっとも低くなってしまったが、実用上は問題ない印象だ。ただし、親機がWi-Fi 6の場合、やはりWi-Fi 5対応の中継機を利用するのはもったいない。親機がWi-Fi 5なら選ぶメリットもあるが、中継機に投資する前に、親機をWi-Fi 6に交換する選択肢もある。

 なお、標準設定では、親機と中継機との間が2.4GHz帯の144Mbps(IEEE 802.11acの20MHz幅)で接続されてしまうため、今回は側面の「5GHz優先」ボタンをオンにして、最大866Mbpsの5GHz帯を利用する設定にしている。オフの場合、2.4GHz帯が使われるため、100Mbps以下になる場合も珍しくない。

マンションでのテスト

マンションのテスト環境

 続いて2LDKのマンションでのテストだ。計測方法は戸建てと変わらない。建物の構造が鉄筋コンクリートなので電波が通りにくい状況となる。こちらの環境では、中継機を廊下に設置して、各部屋および廊下で速度を計測している。

 こちらもやはり単体の性能が高い。もっとも遠い場所で400Mbpsオーバーなので、通常は中継機の必要性は感じない環境だ。

 中継機を利用したケースでは、どの計測でも部屋①の値が大幅に低下している。これは、同一室内の親機ではなく、廊下の中継機に接続されてしまっていることが原因となる。計測地点からドアを経由して廊下側の方が近いと判断されてしまったようだ。

 中継機では、このように接続先が自動的に判断されるため、そもそも中継機が必要ないようなコンパクトな環境では、逆に速度が低下してしまうことも珍しくない。

 それでも、【松】WEX-5400AX6を利用することで、もっとも遠い場所で上りが+100Mbpsされているため、中継機によって速度を向上させることが可能だ。

 【竹】WEX-1800AX4と【梅】WEX-1166DHP3は、すべての場所で、中継機経由の通信となってしまったことで、単体より性能が低くなってしまった。

 なお、マンションでは、【松】WEX-5400AX6のみ、中継機を部屋③に設置したケースも計測している。この場合、部屋①はルーターに接続され速度が改善、部屋③でも上りの速度が改善されている。

 ただ、部屋②はやはり単体の方が速くなってしまうので、そもそも中継機が必要ない環境と言える。もちろん、これは使用するルーターの性能に依存するので、同じような構造の住居で必ずしも中継器が不要というわけではない。

中継機も高性能なものを選びたい

 以上、松竹梅の3種類の中継機を実際にテストしてみたが、やはり高性能な中継機ほど結果は良好になった。

 Wi-Fi 6は単体でもかなり高性能なので、電波が届かないというケースでは、まず親機を高性能な製品に交換することを第一に検討し、それでも電波が届かない場合に中継機の出番となるが、基本的には親機のスペックを考慮して選ぶことが大切だ。

 4,803Mbps対応の親機を使っている場合は、中継機も4,803Mbps対応のものを選びたい。個人的には、多くの環境で多少価格は高くなるが、松のWEX-5400AX6をおすすめしたいところだ。

 ただし、比較的コンパクトな環境などでは、中継機を設置することで逆に速度が低下する可能性もある。近距離で接続先が中継機経由になるという場合だ。判断基準としては、単体で300~400Mbpsの実効速度が得られているのであれば、中継機なしでも十分と考えていいだろう。

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