公開日:2023/10/25 12:00 最終更新日:2023/10/25 15:19
筆者: 渡辺 陽一郎
カメラマン:三菱自動車/茂呂 幸正/和田 清志
三菱の新型ピックアップトラック「トライトン」が日本に再上陸!
三菱が今後日本で発売する新型車として、トライトンは注目の車種といえます。新型トライトンはタイで生産されているピックアップトラックです。
タイなどのアジア地域ではもともとピックアップトラックの需要が多く、税率も乗用車に比べて低いため、トライトンは人気のある車種の一つです。
新型トライトンの開発者は「税率の安さにより、ピックアップトラックの車内を広げたエクストラキャブ仕様は、ファミリーカーとしても活用できる」と話します。そのため、以前からタイではトライトンが販売されていました。2024年には新型トライトンを日本へ輸入販売します。
三菱は2006年から2011年にかけて従来型のトライトンを輸入販売していました。ただし当時の日本では、三菱 アウトランダーのような前輪駆動をベースにしたシティ派SUVの人気が高く、トライトンの1か月平均販売台数は30〜40台にとどまりました。
それが近年になると、国内のSUVを取り巻く状況が変わりました。トヨタのヤリスクロスやカローラクロスなどのシティ派SUVが大幅に増えた結果、後輪駆動ベースの悪路向けSUVが改めて注目され始めました。
日本車では、スズキ ジムニーやトヨタ ランドクルーザーなどの悪路向けSUVが注目され、今後は悪路向けSUVの原点ともされるトヨタ ランドクルーザー70も国内販売が再開されます。また輸入車ではジープ ラングラーが堅調に販売されています。このように、後輪駆動ベースの悪路向けSUVが増え始めています。
そうなると、SUVの老舗とされる三菱も対応したいところです。しかし、三菱の悪路向けSUVであったパジェロは販売を終えており、国内に後輪駆動ベースの悪路向けのSUVが用意されていませんでした。そこでこの度、タイで販売されているトライトンがフルモデルチェンジしたこともあり、もう一度日本で輸入販売される運びとなりました。
今回日本に輸入される新型トライトンは前述の通り4ドアのダブルキャブ仕様で、2列目シートの後部に荷台が備えられています。
新型トライトンのボディサイズと外観|街乗りには不向きなサイズだ
新型トライトンのボディサイズは、全長5360mm、全幅1930mm、全高1810mmです。三菱 アウトランダーの全長は4710mm、全幅は1860mmなので、新型トライトンは大きく、最小回転半径も6.2mと大きくなります。混雑した街中や駐車場では扱いにくいです。
新型トライトンの外観(エクステリア)はピックアップトラックらしい角ばったデザインです。フロントマスクは、現在の三菱車に共通するダイナミックシールドで存在感を強めています。
▼新型トライトンの外観(エクステリア)をもっと見たい方は画像をクリック(フォトギャラリーに移動します)
新型トライトンの内装|一般的なSUVのようなデザインで質感も高い
新型トライトンの内装を見てみましょう。
車内に入ると、インパネにはソフトパッドが装着され、一般的なSUVのデザインです。実用性が重視され、飾り気のないのが一般的なピックアップトラック。しかし内装は上質です。また、前席の座り心地も同様で、腰をしっかりと支えます。
新型トライトンは4ドアのダブルキャブとあって、後席にも不満はありません。
身長170cmの大人4人が乗車した時、後席に座る乗員の膝元には握りこぶし2つ弱の余裕がありました。背もたれの角度を立てたので少し窮屈ですが、大人4人が乗車できます。
新型トライトンのエンジン|2.4Lディーゼルのツインターボエンジンに6速ATを組み合わせた
新型トライトンのエンジンは、直列4気筒2.4Lディーゼルのツインターボです。最高出力は204馬力(3,500回転)、最大トルクは47.9kg-m(1,500〜2,750回転)で、後者の数値は4.5Lのガソリンエンジンと同等の性能です。
6速ATと組み合わせることで、街中では低回転域を保ちながら加速でき、峠道などでは高回転域を維持できます。発進直後の1,300回転付近から余裕のある駆動力が発揮され、悪路も確実に走破できました。
▼新型トライトンの内装(インテリア)をもっと見たい方は画像をクリック(フォトギャラリーに移動します)
新型トライトンの走行性能|悪路走破性能は三菱車の中でも高いレベル
新型トライトンの4WDシステムは、前後輪の回転数を調節できるセンターデフ式です。そのため、悪路だけでなく舗装路でも四輪を駆動させて走行できます。
センターデフを直結させるローモードを選ぶと、駆動力が増幅され、デコボコの激しい悪路も走りやすくなります。
新型トライトンの外観(エクステリア)はピックアップトラックですが、悪路の走破力は、パジェロのような悪路向けのSUVと同等か、それ以上です。
新型トライトンでは走行状態に応じて制御を変更するドライブモードも搭載しています。ドライブモードでは、グラベル(未舗装路)、マッド(泥道)、サンド(砂地)などを選ぶことができます。これらの機能により、新型トライトンの悪路走破力は、三菱のSUVでも最高峰に位置付けられます。
新型トライトンは、滑りやすいデコボコの激しい悪路でも、4WDのモードを選択している状態であればアクセルペダルを緩く踏むだけで走り抜けることができるのが特徴です。
また新型トライトンは最低地上高にも222mmの余裕があります。無理は禁物ですが、慎重に運転すれば相当な悪路でも立ち往生せずに済みます。
新型トライトンの乗り心地|突き上げ感や上下の揺れを抑えたことでピックアップトラックとは思えないほど快適
新型トライトンの乗り心地は特筆すべきポイントです。
新型トライトンは悪路向けの足まわりを装着したピックアップトラック。悪路向けの足回りの場合、どうしても突き上げ感や上下の揺れが発生するものですが、うまく調整されており、乗り心地も悪くありません。ステアリングホイールを回したときの反応も正確で、ピックアップトラック特有の曖昧さはありません。
新型トライトンは、優れた悪路走破力と自然な馴染みやすい運転感覚を両立させました。
新型トライトンの価格|498万円〜は強気の値段設定だ
そんな進化したピックアップトラックの新型トライトンの価格が気になるところです。
三菱の販売店に尋ねたところ、以下のように返答されました。
「新型トライトンは2024年の1月から3月頃に発売される予定で、グレードなどの正確な内容は明らかにされていません。実質的に最上級グレードのみを販売する予定です。」
新型トライトンの予定価格帯(税込)は498万円〜540万円と発表されています。500万円前後の価格は相当に高いです。
新型トライトンのライバル車比較|トヨタ ハイラックスと比べても高価
いくつかの車種を例に挙げて、価格を比較してみましょう。
まず同じ三菱車では、4輪をモーターで駆動するプラグインハイブリッドのアウトランダーGの価格は517万9900円です。
新型トライトンのライバル車としては、同様にタイから輸入されるピックアップトラックのトヨタ ハイラックスが存在します。
ハイラックスの価格は標準のZグレードが407万2000円です。外装をドレスアップし、ショックアブソーバーなどを変更したスポーツ指向の強いGRスポーツでも431万2000円です。
ハイラックスのエンジンは直列4気筒2.4Lのディーゼルターボで、最高出力は150馬力、最大トルクは40.8kg-mです。新型トライトンの204馬力・47.9kg-mを下回ります。
ハイラックスと新型トライトンでは4WDシステムが異なります。ハイラックスは前後輪の回転数を調節できないパートタイム式です。そのため、ハイラックスの4WDシステムは悪路でのみ使用し、舗装路では後輪駆動の2WDで走行します。
センターデフ式フルタイム4WDの新型トライトンと異なり、ハイラックスでは峠道や高速道路で4輪駆動の安定性を得ることはできません。
このように、新型トライトンはハイラックスに比べて動力性能が高く、4WDの違いによる安定性も優れ、さらに乗り心地も快適です。しかし、価格が70〜100万円も上まわると割高な印象も強くなります。
かつて三菱のSUVモデルであるパジェロは、3.2Lのディーゼルターボを搭載するエクシードグレードが約430万円に設定されていました。
新型トライトンも、ピックアップトラックであることを考えると、430万円前後が上限であると考えられます。
2006年にトライトンが発売された時の価格は294万円でしたので、新型トライトンの約500万円という価格設定は、かなり高額であると言えるでしょう。
新型トライトンの評価・レビュー
外観
4.0
★★★★☆
内装・居住性
3.0
★★★☆☆
走行性能
4.0
★★★★☆
運転のしやすさ
2.0
★★☆☆☆
乗り心地
3.0
★★★☆☆
燃費
3.0
★★★☆☆
価格の割安度
2.0
★★☆☆☆
〇 新型トライトンの良い点
・外観がカッコ良く、内装もピックアップトラックの中では上質
・ピックアップトラックとしては4WDシステムの機能が高い
・ライバル車のトヨタ ハイラックスに比べると乗り心地が快適で安定性も優れている
× 新型トライトンの気になる点
・価格帯が498〜540万円では高すぎる
・ホイールベースが長く、小回りの利きが悪い
・車外にいるとディーゼル特有のノイズが耳障りに感じる
当記事の情報は2023年10月時点のものです。価格やスペックなどはメーカーの発表により変更される可能性があります。最新の情報はメーカーの公式発表をご確認ください。
メーカーから公式発表次第、燃費などの情報を加筆予定です。
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筆者 渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る
監修者 樺田 卓也 (MOTA編集長)
自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。
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