特集 価格決定力をどう上げるか
インフレが長期化する兆しが見え、原材料やエネルギー、人件費高騰が続く。価格転嫁、値上げができなければ人材が流出、供給力の崩壊が現実になりかねない。適正な価格決めと、価格の実現にどう取り組むのか。さまざまな業種の経営者にそのアプローチを学ぶ。
(写真/PIXTA)
<特集全体の目次>
・日東物流が挑む「労働環境の改善は適正な価格が大前提」
・BtoB企業の価格交渉はまず「変動費」、次に「付加価値額」(11月7日公開)
・ITで見積もり自動化、値引きなし…価格競争を脱した会社の値決め(11月8日公開)
「原材料費、人件費、光熱費が同時に上がっていく。こんな状況はこれまで一度も経験したことがない」(ある中小企業経営者)
同時・持続的なコスト上昇によって、多くの企業が「値上げ」の問題に直面している。少なくとも変動費の上昇分を価格に転嫁できなければ、利益が削られていくのは明らかだ。加えて、人手不足は深刻化する一方。賃上げをしていかなければ人材は流出し、補うことも難しくなるだろう。そうなれば行き着く先は企業としての供給力の崩壊かもしれない。
給食会社のホーユー(広島市)が、原材料費や光熱費の高騰を理由に突然事業を停止、倒産に至ったのは記憶に新しい。同社は値上げを交渉していた契約先もあったとされるが、さまざまなコストの急激な上昇には追いつけなかった。
安さより供給力に重点
しかし実際は、既に何度かの値上げに成功した中小企業も少なくないだろう。物価上昇と人材不足が続く中で供給力を確保するため、取引先の値上げを容認する流れができてきたからだ。コロナ下で起きたサプライチェーン停滞の影響も大きかった。
「この3年で大企業の姿勢は変わった。以前は取引の際に重視する項目は圧倒的に価格だったが、今は納期が最優先に。供給力の確保が至上命題になってきた」。中小製造業向けのコンサルティングを行うゼロプラス(兵庫県伊丹市)の大場正樹代表はこう話す。
とはいえ、コスト上昇分の価格転嫁だけでは先行きは暗い。「賃上げや未来への投資の原資となる、付加価値額の値上げをどう実現するかがカギだ」(大場氏)。
価格を上げれば取引先や顧客が離れてしまうリスクは当然ある。それを乗り越えるには、自社が値上げによって目指す目的を社内で明確にし、さらに値上げの根拠を示すバックデータや交渉材料の準備などの「戦術」も必要だ。
自社にとって適正な価格をどう決めるか。その価格によって自社が提供できる価値をどのように取引先や顧客に伝え、実現するか。価格決定力をいかに上げるのか、その実際と、経営者の考え方を聞いた。
日東物流が挑む「労働環境の改善は適正な価格が大前提」 - 日経ビジネスオンライン
Read More
No comments:
Post a Comment