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Monday, February 5, 2024

アングル:中国の零細企業、輸出価格下落で存亡の危機 - ロイター (Reuters Japan)

アングル:中国の零細企業、輸出価格下落で存亡の危機

 中国で照明器具工場を営むクリス・リンさんは、海外の得意先から今年初めての注文を受けた時、究極の選択を迫られた。写真は山東省煙台市の港に並んだ車。2023年5月撮影(2024年 ロイター/China Daily)

[北京/香港 5日 ロイター] - 中国で照明器具工場を営むクリス・リンさんは、海外の得意先から今年初めての注文を受けた時、究極の選択を迫られた。赤字覚悟で受けるか、さもなければ従業員に春節(旧正月)後の解雇を言い渡すか――。

「この注文を失うわけにはいかなかった」とリンさん。10─17日の春節後は、東部の台州市にある工場の稼働率を半分ほどに減らして再スタートする計画だ。

「この顧客を永遠に失う可能性があり、そうなればこんなに多くの従業員の暮らしを脅かす恐れがあった。生産再開を遅らせば、わが社の事業は危ないと疑われ始めるかもしれない。うわさが広がれば、サプライヤーの決定にも影響する」と述べた。

中国では生産者物価指数(PPI)の低下が長引き、零細な輸出業者は存亡の危機に直面している。海外の金利上昇と保護主義の台頭によって需要が縮小し、絶え間ない値下げ競争にさらされているのだ。

PPIは15カ月連続で下がり、ぎりぎりまで利ざやを圧迫。鉱工業生産と雇用が脅かされ、不動産危機と債務問題による中国経済の悪化に拍車をかけている。

2022年の商務省データによると、中国では約1億8000万人が輸出関連の職に就いている。

ANZの首席中国エコノミスト、レイモンド・ユン氏は、デフレに対処することは、約5%と目される今年の成長率目標を達成する以上に優先されるべきだと言う。

「企業は商品価格をカットし、次いで従業員の給与をカットしている。消費者は買わなくなるだろう。悪循環に陥りかねない」とユン氏は懸念を示した。

中国製造業の利益は昨年2.3%減少した。新型コロナウイルスにより打撃を被った2022年の4%減に続いての減少だ。公式調査によると、製造業の活動は今年1月に4カ月連続で、輸出受注は10カ月連続で、それぞれ縮小した。

輸出が振るわないため、政策当局は成長目標達成のために別のレバーを引っ張る必要が生じる。つまり個人消費を刺激することが急務になるだろう、とアナリストは言う。

しかし、そうやって経済成長の軸足を移す「リバランス」を実施すればするほど「価格への下落圧力は強まり、利ざやは消滅する」とS&Pグローバルのアジア太平洋首席エコノミスト、ルイス・クイジス氏は指摘した。

Reuters Graphics

<貧乏暇なし>

中国はこれまで、消費者よりも製造業に金融資源を多く振り向け、電気自動車(EⅤ)など高級品分野でも設備過剰とデフレ懸念に拍車をかけてきた。

ある自動車用金型工場の幹部は、自社の生産と輸出は増える見通しだが、利益は減りそうだと述べ「貧乏暇なし」だと競争激化を嘆く。

中国人民銀行(中央銀行)は景気てこ入れのために金融システムに流動性を供給し、銀行は工場に低利の融資をあふれさせている。

だが、大手のライバルに圧迫されている零細工場は、新たなビジネスのために融資を受けようとはしない。エコノミストは、中国の金融政策は波及経路が切断されてしまい、非効率化する一方だと言う。

昨年は国の投資が6.4%増加する一方、民間企業の設備投資は0.4%減少した。民間企業は都市部雇用の80%を担っている。

電子商取引で衣料品を輸出しているミアオ・ユジエ氏は「何人もの銀行担当者から電話がかかってくるが、融資を断ると非常に心配そうにする」と語る。

ユジエ氏は昨年、従業員を20人ほどに半減させたが、より大きな企業に市場を奪われ黒字化できないという。廃業も検討中という同氏は「融資が必要なのは事業を広げたいときだけだ」と言い切った。

<2015年との違い>

中国は2015年にもデフレ懸念を経験した。当時は国有企業が支配する鉄鋼などの主要産業が設備過剰に見舞われた。当局はこうした企業の事業規模を縮小して供給を減らすとともに、需要拡大のためにインフラ・不動産建設を急いだ。

ところが「今回は民間セクターの設備余剰という側面が強い」とフワバオ・トラストのエコノミスト、ニエ・ウェン氏は言い、電子機器、化学、機械メーカーをその筆頭に挙げた。こうした企業は従業員数が多く、政策当局にとってセンシティブな部分だ。

「従って供給を減らすのは難しく、今年は需要サイドの対応を拡大せざるを得ないだろう」とニエ氏は解説した。

温州市で産業用バルブメーカーを営むヤン・ビンベン氏は、事業をたたむことも考えたが、長年働いてくれた従業員には恩義があるため思いとどまったと語る。

とはいえ、いつまで工場を続けられるかは分からない。「今後10年間のピークは今年になりそうだ」と肩を落とした。

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