政情不安が続くミャンマーで、食料品や医薬品、燃油といった必需品の価格高騰が続いている。チャット安の進展や、長引く金融機関の機能不全で、物価の上昇に歯止めがかからない状況だ。経済運営で実績を示したい国軍は、農産品の安定供給や食用油の価格統制に躍起になっている。 最大都市ヤンゴンの卸売・小売業者らは、2月1日のクーデター後に食料品の価格が10~15%上昇していると口をそろえる。 19日付イレブン電子版によれば、コメは高級品種を中心に高騰している。「ポーサン・タウンピャン」品種は1袋(108ポンド=約49キロ)当たり5万チャット(約3,300円)と、以前より約25%高い。 標準的な鶏肉価格は1ビス(約1.6キログラム)当たり2割上昇して6,000チャット。豚肉は4割余り高い同1万2,000チャットとなっている。 南ダゴン郡区の消費者は「1.8リットルのサラダ油が4,500チャットもする。これまでより3割高い」と困惑する。 国営紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーによれば、18日のヤンゴンでの黒豆の価格は1トン当たり106万9,000チャットと、1日から20%上昇した。 イレブンによれば、医薬品も同様だ。ヤンゴンの卸売市場の業者によると、「5~10%値上がりしている」。ミンガラ・タウンニュン郡区でインド製の医薬品を取り扱う業者は「まだ在庫はあるが、現在は商品を輸入できる状態ではない」と今後に懸念を示す。 ガソリンの値上がりも続いている。世界の燃料価格をまとめたサイト「グローバル・ペトロール・プライシース」によれば、ミャンマーのガソリン(RON95=オクタン価95)価格は17日時点で、1リットル当たり1,171.16チャットと、2月1日と比べて39%上昇した。ニューヨーク原油先物相場の指標となる米国産標準油種(WTI)は同じ期間に、24%の上昇率だった。 ■貧困層を直撃 物価上昇の背景にあるのは、急速なチャット安や、政情不安による物流の混乱などだ。チャットの対米ドルレートは、クーデター後に2割も下落した。5月に入り、市中レートは1米ドル=1,700チャットを超える日も出てきた。 チャット売りの原因は、国内経済の先行きへの不安や、銀行員の「市民不服従運動(CDM)」への参加による金融機関の機能不全にある。チャットの信認低下と反比例して金価格は高騰しており、国営紙によれば、12日には過去最高を更新した。 必需品の価格高騰は、貧困層の生活を直撃している。国連世界食糧計画(WFP)は4月、経済の悪化による貧困層の所得減少と食料品の価格上昇に危機感を表明。「向こう半年で、最大340万人が飢餓に陥る恐れがある」と警鐘を鳴らした。 銀行の預金引き出し制限も、生活苦に拍車をかけている。ヤンゴンのマヤンゴン郡区に住む主婦(36)は、以前は生鮮市場で毎日、5,000チャット程度の買い物をしていたが、現在は週2回で計2万チャットしか使わない。NNAの取材に「簡単に現金を引き出せないので、買い物には細心の注意を払っている」と語った。 国軍も、問題は認識している。ミン・アウン・フライン総司令官は、食料増産による輸入品からの代替を進める必要性をたびたび強調している。 総司令官は、5月10日の最高意思決定機関「国家統治評議会」(SAC)の会合で「ミャンマー人の食用油の年間消費量は4.5ビスと多すぎる。食用油は自給できないので輸入のために外貨が使われている」と発言。国内で増産を図るとともに、保健・スポーツ省などに油を抑えた食生活を啓発するよう指示した。商業省は同日、食用油の輸入・備蓄・販売に関する監督委員会を設置し、適正価格の維持に取り組む方針を発表した。 さらに総司令官は同じ会議で、動物飼料についても「国内には飼料に転用できる農産品が十分にある。飼料を増産して外貨を節約すべきだ。食料自給を進めて、公正な価格で国民に分配すべきだ」と主張した。 コメについては、6月の田植えシーズンを控えて、チャット安による肥料や農業用資材の輸入価格の値上がりが懸念される。ミャンマー・コメ連盟(MRF)のイェ・ミン・アウン会長は国営紙に「価格を安定させ、不足させないようにすることが現在の最優先事項」と語り、取引業者などと調整を続けていると説明した。
【ミャンマー】食料や燃油、価格高騰が続く 国軍は安定供給に躍起(NNA) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
Read More
No comments:
Post a Comment