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Tuesday, August 9, 2022

低過ぎるアジアの炭素価格、排出抑制には効果薄-制度進展も遅く - ブルームバーグ

アジア各国で、地球温暖化対策として二酸化炭素(CO2)排出量に価格を付ける動きが広がっている。だが炭素市場や炭素税といった制度の進展は総じて遅く、期待を裏切る滑り出しとなっている。

  中国と韓国の炭素価格は欧州連合(EU)に比べ極めて低く、気候変動に意味のある影響を及ぼす水準には程遠い。日本とシンガポールの炭素税もまた、課税額が非常に小さい。少なくとも現状のままでは、環境を汚染する業界を変えるのは難しく、ネットゼロの目標達成への貢献も期待しづらい状況だ。

  アジア諸国にとって野心的な価格付けが困難である背景には、インフレ圧力が高まりエネルギー価格が上昇し、経済が不安定化していることがある。 世界銀行は5月に発表したリポートで、カーボンプライシングは排出削減に向けた最も強力な手段の一つである一方、価格シグナルを持続させつつ現状よりも強め、世界の排出量のうちカバーする範囲を広げる必要があるとの見方を示した。

Chinese levels less than an eighth of those in Europe

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  ソウルで気候関連の運動を展開する「プラン1.5」のディレクター、ヨン・セジョン氏は、アジアの炭素市場の規制は緩いため、「排出削減につながるような適正なシグナルを提示できない」と指摘。「市場が機能するようになるためには、汚染の水準に関して今よりも厳しい制約を課し、価格を上昇させ、企業に排出抑制を迫り、クレジットへの需要を高める必要がある」と述べた。

   中国の炭素価格は2022年初頭に付けた高値は1トン当たり約9ドル(約1200円)だった。韓国の炭素価格も、中国と大きく変わらない。最も流動性が高い欧州の炭素市場では、同80ドル以上の水準で取引されているが、ニュージーランドだけがこうした欧州の水準からあまり乖離(かいり)していない状況だ。

  国際通貨基金(IMF)によると、約46カ国が排出量取引や炭素税の制度を通じて カーボンプライシングを導入し、世界の排出量のおよそ3分の1をカバーしている。現在の平均価格はCO2換算で1トン当たり6ドルだが、地球温暖化の歯止めに効果を持つ上では、30年までに同75ドルまで価格を上げる必要があるという。以下、アジア各国の状況をまとめた。

中国

  世界最大の排出国である中国は、排出量取引制度を21年半ばに 立ち上げた。同制度は当面、中国の排出量の約40%を生み出す2200余りの電力会社に重点を置く。また鉄鋼やセメント、アルミニウム、石油化学関連の企業も今後対象となる。

  だが同制度の取引は盛り上がらず、業種はなかなか拡大せず、データ収集に絡んだ問題も抱える。中国政府は、排出削減の目標を厳しくすることよりも、排出量取引制度への参加を優先することで、環境と経済のバランスを取ることを重視しているとみられる。21年に生じたエネルギー不足も、政府が化石燃料の使用を控える姿勢を弱める契機となった。

韓国

  韓国は15年に排出量取引制度を導入した。その後、同制度は拡大し、電力、運輸、航空、建設、廃棄物管理などの業界の国内排出量の74%をカバーしている。一方、炭素価格は比較的低いままで、CO2換算で1トン当たり2万8000ウォン(約2900円)と、欧州の水準の4分の1程度にとどまる。割り当てられるカーボンクレジットのうち21-25年に入札の対象となるのは10%のみで、残りは無償で企業に提供される。

ニュージーランド

  ニュージーランドは08年に排出量取引制度を設立、21年に 大規模な改革を実施した。具体的には新たな排出上限を設け、入札の仕組みを導入した。入札は21年3月に開始、22年に入り最大2630万の排出枠が利用可能となった。同国で排出の多い主要セクターである農業は、この制度でカバーされていない。炭素価格はアジアで最も高く、83.32ニュージーランド・ドル(約7100円)となっている。

日本

  日本は12年、アジアで初めて炭素税を導入した。しかし課税額はCO2換算で1トン当たりわずか289円となっている。環境省が今よりも大幅に高い課税を要望したものの、産業界の 抵抗もある中で見送られた。地方公共団体では東京都と埼玉県が、排出量取引制度を導入している。

シンガポール

  シンガポールは19年、CO2換算で1トン当たり5シンガポール・ドル(約490円)の炭素税を導入した。課税額は24年に25ドルへ引き上げ、その後もさらに50ドル、 80ドルと、30年まで段階的に増やしていく計画だ。

オーストラリア

  豪州には排出削減基金の制度がある。これは、政府がリバースオークションによってカーボンクレジットを購入する仕組みだ。気候問題が争点の一つとなった5月の総選挙で政権交代を果たした労働党は、炭素市場に大きな可能性を見いだしている一方、信頼性への懸念から現行制度の独立評価を行うと表明した。

  排出削減保証委員会の前議長のアンドルー・マッキントッシュ氏は3月、現行制度で発行されたカーボンクレジットの最大80%は、温室効果ガスの削減に寄与していないと語った。豪州は12年にカーボンプライシング市場を導入したが、同市場は立ち上げから2年後に廃止となった。

進行中の国

  事情に詳しい複数の関係者によると、世界第3位の排出国であるインドは、エネルギーや鉄鋼、セメント業界をカバーする 炭素取引市場を計画。8月15日の独立記念日にも公式に発表する可能性があり、10-12月(第4四半期)に詳細な計画を整備する方向という。

  IMFによると、タイやベトナム、マレーシア、パキスタンでも何らの形でカーボンプライシングの計画や検討が進められている。

原題:

Carbon Prices in Asia Are Too Cheap to Help Curb Emissions(抜粋)

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