パナソニックが販売店に対し、指定した価格で家電を売ってもらう取り組みを進めている。従来は販売店側が商品を買い取り、自由に値引きして売っていたが、パナソニックが売れ残った在庫を引き取る代わりに価格を決める仕組みだ。値崩れを防ぎ、商品のライフサイクルを延ばす狙いだが、値引きに慣れた消費者に受け入れられるか――。(井上絵莉子、畑中俊)
最上位機種が中心
大阪府内のある家電量販店では、パナソニック製のドライヤーが並ぶ一角に、価格とともに「こちらの商品はメーカー指定価格での販売となります」と記した案内が添えられている。
パナソニックは2020年、販売店からの返品を受け入れる代わりに、販売価格を決める「指定価格制度」での取引を始めた。
メーカー側が販売価格を指示し、守らせることは独占禁止法で禁じられているが、パナソニックの場合、在庫リスクを同社が負うことで、実質的には同社による販売と見なされるため、違反にならないという。
対象はドライヤーのほか、食器洗い乾燥機や冷蔵庫、洗濯機などの最上位機種が中心となる。21年度は、この形での取引が販売額ベースで家電販売の8%を占め、22年度には20%にまで増やす計画だ。
2割値下がり
パナソニックがこの取り組みを始めたのは、量販店などでの値引き競争が商品のライフサイクルを縮め、競争力を損なう要因になっているとの危機感がある。
家電は発売時から、販売終了間際までに2割程度値下がりする。メーカー側は値崩れした価格を戻すため、毎年のように機能を追加したり、デザインを変更したりした新商品を出してきた。1年程度では、画期的な商品の開発は難しいが、新商品としての特徴が必要になるためだ。その結果、ニーズから離れた過剰な機能を持つ商品が増えるなどし、競争力を失ってきたというわけだ。
新制度の導入でこのサイクルを見直し、「付加価値のある商品群を商品価値に見合った価格で買ってもらう」(品田正弘社長)ことにつなげ、単なる改良ではなく、より消費者ニーズに沿った開発を進める狙いだ。
他社は注視
9月以降、多くの量販店が決算セールを迎える。パナソニックの指定価格は受け入れられるのか。
上新電機は「どこも同じ価格なら接客力で勝負できる」と歓迎する。一方、別の量販店は「『交渉次第で安く買えるかも』という思いが来店の動機となるケースもある。メーカーに価格を決められたらアピールできない」と懸念する。
また、パナソニック以外の大手メーカーでは「海外製も含め、価格競争は依然として激しい。値引きなしがどこまで通用するのかまずは注視したい」(関係者)との見方も多く、追随の動きは広がっていない。
パナソニックは「『店舗がショールーム化するのではないか』『値引き商品に消費者が流れるのではないか』など、様々な意見があることは承知している」(パナソニックホールディングスの梅田博和・最高財務責任者)とし、丁寧に理解を求めていきたいとする。
パナソニック、家電の価格を販売店に指定…売れ残りの返品を受け入れる代わり - 読売新聞オンライン
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