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Wednesday, September 14, 2022

価格相応かお値段以上か? 「iPhone 14/14 Pro/14 Pro Max」実機レビュー - ケータイ Watch

 iPhone 14シリーズのうち、3機種が、間もなく発売を迎えます。今年は、新たに加わった6.7インチの無印iPhoneこと「iPhone 14 Plus」が10月に控えているなど、少々異例のスケジュール。「iPhone 14」「iPhone 14 Pro」「iPhone 14 Pro Max」も、例年より約1週間ほど早い、9月16日に登場します。そんな3モデルを、一足先に試用することができました。“スマホとお金”をテーマにした本連載では、新発売のiPhone 14シリーズを紹介つつ、お値段に見合った製品なのかに力点を置きながらチェックしていきます。

iPhone 14シリーズ3機種が、16日に発売される。左からiPhone 14、iPhone 14 Pro、iPhone 14 Pro Max

円安ドル高を受けて高くなったiPhone、為替レートは健闘

 「高くなった」という意見も聞こえてくるiPhone 14シリーズですが、実は米国での価格はiPhone 13シリーズから据え置きになっています。iPhone 12シリーズのときに導入され、iPhone 13シリーズでもコンパクトかつ最安の位置づけだった“mini”がなくなったため、平均単価は上がっているものの、同列の製品同士を比べた場合、 ドルベースでの値段は変わっていません

 イベントで示された以下のスライドが、一番分かりやすいでしょう。シリーズの中でもっとも安いiPhone 14が799ドルから、iPhone 14 Proが999ドルから。iPhone 14 Pro Maxは1099ドルです。一方で、日本ではiPhone 14が 11万9800円 、iPhone 14 Proが 14万9800円 、iPhone 14 Pro Maxが 16万4800円 から。iPhone 13シリーズの発売時と比べると、価格が上がっています。これは、アップルが 円安ドル高の為替レート を一定程度、価格に反映したためです。

日本にいると高くなったように思えるiPhoneだが、ドル建ての値段は変わっていない

 ただし、為替レートそのままかというと、必ずしもそうではありません。iPhone 14は799ドルに対して 11万9800円 で、日本は税込み表記のため、税抜きに直すと10万8909円。1ドルあたり、約136円で計算されていることが分かります。これに対し、同時に発表されたAirPods Pro(第2世代)は249ドルに 3万9800円 、税抜きで3万6181円という価格のため、1ドルあたり約145円。iPhoneは日本での販売数量が多く、シェアも高いため、その勢いを落とさないよう、ある程度アップル側が利益を削って為替レートを抑えた可能性があります。

同時に発売されるAirPods Pro(第2世代)は、1ドル約145円のレートになっている。Appleが、日本でのiPhoneの販売に注力していることが分かるはずだ

 以前、本連載でも取り上げたように、アップルは、日本でのiPhoneの価格を、7月に値上げしています。価格改定は円安ドル高の為替レートを反映したものでしたが、ここでもやはり、数量の見込めそうなiPhone 13 miniは、比較的値上げ幅が抑えられていました。ある程度、売れ行きなどを加味しつつ、伸ばしたい端末は安めに、数は出ないものの刺さる人には刺さる端末は高めにといった形で、緩急がつけられていることがうかがえます。そんな為替レート設定もあり、日本のiPhoneの価格は、国際的に見ればそれほど高い水準にはなっていません。

 ということを踏まえつつ、iPhone 14、14 Pro、14 Pro Maxを見ていきましょう。

ディスプレイ、カメラ、ダイナミックアイランドと大胆に進化したiPhone 14 Pro

 個人的にお得だと思うのは、やはり Proモデル2機種 。iPhone 13 Pro、Pro Maxからの進化の幅が大きく、デザイン的にもフルモデルチェンジを果たしているからです。ディスプレイやイン・アウト両方のカメラがガラッと変わり、チップセットの処理能力も上がっています。また、米国やカナダに持ち込んだ場合に限られますが、日本版でも、新機能の 「衛星経由の緊急SOS」 (11月からサービス開始)が利用できます。

ディスプレイやカメラが大きく進化したiPhone 14 Pro

 業界全体で部材費の高騰も取りざたされているため、iPhone 13 Pro、Pro Maxから据え置きだった価格が発表された際には、やや驚きすらありました。50ドルから100ドル程度は、高くなっている可能性があると思っていたからです。いい意味で期待を裏切られたのがiPhone 14 ProやiPhone 14 Pro Maxだったと言ってもいいでしょう。

 たとえば、ハードウェア的にはディスプレイのリフレッシュレートが、1Hzから120Hzの可変になっています。iPhone 13 Pro、13 Pro Maxも最大120Hzでしたが、下限は10Hzでした。1Hzまでリフレッシュレートを落とせるようになったことを生かし、iPhone 14 Pro、14 Pro Maxは 常時表示 に対応しています。省電力化が可能になり、映像を常に出しておいても大きくバッテリーを消費しなくなったからです。

常時表示のディスプレイを搭載。時間や通知が分かるほか、ウィジェットで各種情報を取得できる。画面を点灯しないで済むのが便利だ

 この常時表示ディスプレイは、 iOS 16 との相性が抜群にいいと感じました。iOS 16では、ロック画面が刷新され、カスタマイズの幅が大きく広がったと同時に、ウィジェットにも対応しました。常時表示であれば、時計やウィジェットに表示される情報を、いつでも見ることが可能。iPhoneを立てかけておくだけで、必要最小限のことが分かり、非常に便利。一度使うと、常時表示なしのiPhoneには戻れなくなりそうです。

iOS 16では、さまざまなウィジェットをロック画面に配置できる。これを上手に組み合わせれば、iPhoneの画面を点灯させる機会が減りそうだ

 広角カメラも メインカメラ と名称を改め、画素数は 4800万画素 に上がりました。これは、どちらかと言えばサイズの大きな写真を撮るためではなく、感度を上げるため。ピクセルビニングで4つの画素を1つにまとめ、受光面積を大きくしています。結果として、暗所での仕上がり、特に暗がりの中で人物や物を撮ったときのクオリティが、大きく上がっています。

Proモデル2機種は、メインカメラが4800万画素になったこともあり、カメラユニットが大型化している
暗所で撮った人物写真。肌の階調が滑らかで、新しいセンサーの効果がよく出ている。モデルは竹森みずほさん

 特筆したいのは、やはりノッチに代わって採用されることになった ダイナミックアイランド です。要するに、カメラとセンサーをくり抜いたディスプレイなのですが、そこを使って ユーザーインターフェイス(UI) に昇華しているのはさすがアップル。バックグラウンドで動作しているアプリや、アプリを使った通話中のステータスが従来のUIより分かりやすく、あえてパンチホールを配置したのではないかと思わせるほど。

カメラやセンサー部分のみディスプレイに穴が開く形状になった。この部分をソフトウェアと組み合わせることで、ダイナミックアイランドを実現する

 グニュっとサイズが変わる小気味のいい動きで、ついついタップしてしまいたくなるほどです。全画面表示をした際に映像の一部が隠れてしまう点はノッチと同じですが、そこにUIとしての意味を持たせたことで、穴も許せてしまうのは不思議なものです。

あたかもカメラの黒いパーツが伸びたかのような動きで、バックグラウンドや着信などの情報を知らせる

 いずれの機能も、ハードウェアに依存しつつ、その処理は内蔵した 「A16 Bionic」 が支えています。ハードウェアとソフトウェアの融合は、アップルが得意とするところ。最新のiOS 16をもっとも生かせるのが、iPhone 14 Proや14 Pro Maxと言ってもいいでしょう。それを考えると、価格を据え置いたのはやはりインパクトが大きかったと思います。日本では昨年比で値上がりしてしまいましたが、端末の完成度を踏まえると、納得感はあります。

悩ましい無印iPhone、最大のライバルは過去のiPhoneか

 一方で、iPhone 14に関しては、価格が据え置かれたことにそこまでのインパクトはありませんでした。iPhone 14 Pro、14 Pro Maxはお得感がありましたが、こちらは価格相応といったところ。スペックを踏まえると、価格据え置きは予想の範疇でした。デザインに関しては、iPhone 13とほぼ同じ。iPhone 12との比較ではノッチが小さくなっているものの、大枠で言えばそこまでの刷新感はありません。

iPhone 14は、iPhone 13までのデザインを踏襲している

 搭載されているチップセットが 「A15 Bionic」 なのも、お得感が薄れてしまうところです。もっとも、iPhone 14のA15 Bionicは、iPhone 13のそれよりもGPUが1コア増えているため、厳密に言えばまったく同じスペックというわけではありません。また、処理を司るスマホの頭脳とは言え、チップセットはあくまで部品の1つ。元々処理能力が高いので、性能的には今でも十分高いということは付け加えておきます。

Geekbench 5で計測したiPhone 14のスコア。数値はiPhone 13 Proに近く、iPhone 14 Proよりは低めだ

 カメラも、ピクセルピッチはiPhone 13 Proや13 Pro Max相当になり、画質は上がっています。ナイトモード利用時の処理をRAWから行う 「フォトニックエンジン」 にも対応しており、全体的に見れば、画質はiPhone 13や13 Pro Max以上にはなっています。このように、一部機能は昨年のProモデル相当かそれ以上ではありますが、裏を返せば、22年モデルとしてのハードウェア的な冒険は少なめ。据え置きで、価格相応と言えるかもしれません。

iPhone 14で撮影したモデルの写真。細部まで比べると若干iPhone 14 Proの方がキレイだが、傾向はほぼ同じ。ここまで背景が明るいと差が出づらく。裏を返せば、iPhone 14でも十分高性能ということだ

 さらに悩ましいのが、iPhone 13が価格を下げて継続販売していること。アップルストアでの価格は 10万7800円 で、その差は1万2000円になります。カメラに強いこだわりがなく、価格が少しでも安い方がいいのであれば、販売を続けているiPhone 13にする選択肢もあるわけです。コンパクトサイズが合うのであれば、iPhone 13 miniも、9万2800円で販売が継続しています。

iPhone 13や13 miniも価格を下げ、継続販売されている。iPhone 14とどちらを選択するのか、悩ましい選択になりそうだ

 1コアぶんのGPUとカメラ性能の向上を取るか、1万2000円でも安い方を取るかは人それぞれですが、ことiPhone 14に関しては、価格据え置きが妥当に見えたのはこのような理由からです。ただし、10月になると、ここにiPhone 14 Plusが加わり、選択の仕方が変わってきます。6.7インチの無印iPhoneは、初めて。大画面だけを理由に“Max”とつくProモデルを選んでいた人にとって、うれしいバリエーションと言えるでしょう。

 iPhone 14 Plusは 13万4800円 で、画面サイズが同じiPhone 14 Pro Maxの 16万4800円 とは3万円もの差があります。機能的にはiPhone 14 Pro Maxの方が上ですが、ボディがアルミのぶん、203gと比較的軽いのはiPhone 14 Plusの利点です。発売が先のため、まだ実機は発表会でしか触れていませんが、その意味では、Plusが加わったことにこそ、無印iPhone 14シリーズの真価があるのかもしれません。

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