24日の米株式相場は反落。朝方発表された1月の個人消費支出(PCE)価格指数は、予想を上回る伸びとなった。これを受け、米金融当局の積極的な利上げにはまだ長い道のりが残されており、経済がソフトランディング(軟着陸)を達成できる可能性は低くなったとの見方が強まった。
米PCE価格指数、予想上回る伸び-利上げ継続への圧力増す (3)
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 3970.04 | -42.28 | -1.05% |
ダウ工業株30種平均 | 32816.92 | -336.99 | -1.02% |
ナスダック総合指数 | 11394.94 | -195.46 | -1.69% |
株式市場ではボラティリティーの低い状況が長く続いていたが、ここに来て再び変動性が高まってきている。経済面での不確実要素という背景もあるが、相場が昨年10月の安値から急激に上昇し割高感が出てきたことも反映している。経済がリセッション(景気後退)に陥り、企業の業績見通しが一段と影響を受ける恐れがあるとの懸念が広がる中、これまでの上昇は日ごとに削られている。
S&P500種株価指数は、週間ベースでは今年に入り最大の下げ。米国債利回りが上昇する中でハイテク銘柄中心のナスダック100はこの日1.7%下げた。金利スワップ市場は、今後3回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での0.25ポイントずつの利上げを100%織り込んでいる。また政策金利のピークについては、7月までに5.4%程度と、従来予想から引き上げられた。
アライのシニア市場ストラテジスト、ブライアン・オーバービー氏は「今回のインフレデータと1月の上昇を受けた現在のバリュエーション、そして低調な第4四半期の決算シーズンを踏まえると、現時点で株式に上振れ余地はほとんどない」と分析。「より高い政策金利がより長く続くという認識が定着し始める中、『ノーランディング』見通しが『バンピーランディング(揺れの大きな着陸)』見通しに急速に変わりつつある」と述べた。
ジャナス・ヘンダーソンの米債券責任者、グレッグ・ウィレンスキー氏はPCE価格指数について、「このデータはFOMCや投資家が期待していたものとは違った。よってFOMCが政策金利を従来の織り込みより高く引き上げ、より長期に維持する必要があるとの予想へと、市場は調整するだろう。市場予想を上回るインフレデータに加え、労働市場と個人消費の強さが継続している状況は、FOMCにまだ仕事が残されていることを示唆する。市場が待ち望む利上げ休止まではもう少し長く待つ必要がありそうだ」と述べた。
クリーブランド連銀の メスター総裁は、PCE価格指数が予想を上回る伸びとなったことについて、利上げ継続の必要性を示していると指摘。ただ、3月のFOMC会合では0.5ポイント利上げが正当化されるとまでは踏み込まなかった。PCE価格指数のデータは、「インフレ率を確実に低下させる上で、FOMCは政策金利に関してもう少し行動が必要だという事実と整合している」と総裁は述べた。
セントルイス連銀のブラード総裁は別の発言機会で、「今すぐ行動して、信頼回復を急ぐべきだ」と述べた。
米政策金利は6.5%に引き上げる必要があるかもしれないと、ブランダイス大学のスティーブン・チェケッティ教授やJPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏ら5人のエコノミストが指摘。FOMCが物価上昇への対応で当初出遅れたことを厳しく批判した。論文では、米金融政策当局の見通しが依然として楽観的過ぎるとし、物価を制御するにはある程度の経済的痛みを与える必要があると論じている。
最高6.5%への米利上げ必要、学会・金融界エコノミストが論文で指摘
エコノミストのモハメド・エラリアン氏は、FOMCがインフレを目標にまで低下させられるのか、金融市場は懐疑的になり始めていると指摘した。
米国債
米国債は大幅安となり、利回りが上昇。2年債利回りは2007年以来の高水準となった。PCE価格指数が予想を上回る伸びとなったことが手掛かり。金利スワップ市場は、今後3回のFOMC会合での0.25ポイントずつの利上げを100%織り込んだほか、年末までの利下げ確率を五分五分にまで引き下げた。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 3.92% | 3.6 | 0.92% |
米10年債利回り | 3.94% | 6.6 | 1.71% |
米2年債利回り | 4.81% | 11.6 | 2.47% |
米東部時間 | 16時52分 |
外為
外国為替市場ではドルが上昇。米インフレ指標と金融当局者のタカ派発言を受けて米利上げ予想が強まった。新たな対ロシア制裁や米中の緊張もドルを下支えした。ドル指数は週間で昨年9月以来の大幅な上昇率。円は対ドルで下落し、週間でも6週連続安となった。
円は対ドルで一時1.4%安の1ドル=136円52銭となり、2カ月ぶり安値を更新。週間では1.7%安。前週は2.1%下げていた。
日本銀行の黒田東彦総裁の後任候補に指名された経済学者の植田和男元審議委員は、基調的な物価見通しの改善が進めばイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の正常化が必要になるとの見解を示した。その上で、現時点では金融緩和の継続が適切だと指摘した。衆院議院運営委員会での所信聴取と質疑で述べた。
三菱UFJ銀行の為替ストラテジスト、リー・ハードマン氏はリポートで、「近い将来に円の投機需要を再燃させるような明確なタカ派シグナルはなかった」と分析。「米国をはじめ各地の主要中銀がインフレ沈静化のため追加利上げを余儀なくされると想定され、日本以外で利回りが再び上昇する中、円は下落方向に一段と調整されやすい状況が続く」と記した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1257.14 | 8.40 | 0.67% |
ドル/円 | ¥136.48 | ¥1.78 | 1.32% |
ユーロ/ドル | $1.0544 | -$0.52 | -0.49% |
米東部時間 | 16時52分 |
原油
ニューヨーク原油先物相場は続伸。ただ、前週末とほぼ変わらない水準で引けた。米国の在庫増加や期待に満たない需要回復といった弱気なトレンドが重しになった。
市場は既に供給過剰となっている上に、米国の原油在庫は過去2週間に2400万バレル近く増加した。
BOKファイナンシャル・セキュリティーズのトレーディング担当シニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏はディーゼル価格もウクライナ戦争前の水準に下げたとし、在庫増加や、ロシアが大量の燃料を輸出する手段を得ていることを理由に挙げた。さらに、「多くのトレーダーらはインフレで米国の燃料需要が減速し始めているとも考えている」と述べた。
ニューヨーク商品取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は、前日比93セント(1.2%)高の1バレル=76.32ドルで終了した。ロンドンICEの北海ブレント4月限は95セント高の83.16ドル。
金
ニューヨーク金相場は続落。米個人消費支出(PCE)の統計でインフレ高進が新たに示され、利上げ継続観測が強まったことから、売りが優勢になった。金は週間ベースでは2週連続の下落。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は、前日比9.70ドル(0.5%)安の1オンス=1817.10ドルで終了した。スポット価格はニューヨーク時間午後3時現在、0.7%安の1810.51ドル。
原題: Stock Bull Calls Stifled as PCE Goes the Wrong Way: Markets Wrap(抜粋)
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